セットアップオフィスの原状回復と契約の注意点|退去コストの落とし穴
最終更新:2026年7月
セットアップオフィスは「貸主の造作(内装・設備)が残る前提」で貸し出されるため、退去時の原状回復が一般的なスケルトン区画より軽くなる場合があります。ただし、これは契約でそう定められている場合の話です。造作の所有区分や撤去範囲の線引きが曖昧なまま契約すると、退去時に想定外のコストが発生することもあります。
この記事では、原状回復とは何かという基本から、セットアップ特有の注意点(造作は誰の所有か・残置か撤去か)、契約書のチェックポイント、退去コストを抑えるコツ、そしてよくある失敗と回避策までを実務目線で整理します。セットアップオフィスの仕組み全体を先に押さえたい方はセットアップオフィスとは|費用・居抜きとの違い・探し方まで完全ガイドもあわせてご覧ください。
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原状回復とは?オフィスの退去義務の基本

原状回復とは、賃貸借契約の終了時に、借りた区画を契約で定めた状態に戻して貸主に引き渡す義務のことです。オフィスの場合、住宅と違って「入居時の状態」ではなく「契約で定めた状態(多くは内装のない状態)」まで戻すことを求められるのが一般的で、この範囲と費用が退去時の大きな論点になります。
住宅の賃貸では、経年劣化や通常使用による損耗(いわゆる「通常損耗」)は原則として借主負担にならない、という考え方が国土交通省のガイドラインなどで整理されています。一方で事業用(オフィス)の賃貸借は、契約で「借主がすべて負担してスケルトンに戻す」と定めることも広く行われており、住宅ほど借主が保護されるとは限りません。だからこそ、オフィスでは「契約書に何が書いてあるか」が原状回復の負担を決める、という点をまず押さえてください。
一般的なオフィス移転で発生する原状回復工事には、次のような項目が含まれます。
- 壁紙(クロス)・床材(タイルカーペット・OAフロア)の張り替え・撤去
- 間仕切り・パーティション・会議室などの造作の解体・撤去
- 自社で増設した照明・空調・電源・LAN配線などの撤去・復旧
- 穴あけ跡や塗装の補修、原状への復旧クリーニング
- 什器・サイン(看板)・セキュリティ機器などの撤去と搬出
原状回復費は、区画の広さ・工事範囲・ビルのグレード・工事時間帯(夜間や休日は割高になりやすい)などで大きく変動します。一般的なオフィスでは坪あたり数万円規模がひとつの目安として語られることが多いものの、実際の金額は物件と契約条件によって幅が大きく、一律には決まりません。具体的な費用を知りたい場合は、契約前に「どこまで戻すのか」を確認したうえで見積もりを取るのが確実です。エリア別の賃料・初期費用の相場はセットアップオフィスの初期費用・賃料相場で解説しています。
スケルトン戻しと現状渡しの違い

オフィスの原状回復には、内装をすべて撤去して骨組みの状態に戻す「スケルトン戻し」と、造作を残したまま引き渡す「現状渡し(居抜き渡し)」の2種類があり、どちらになるかは契約で決まります。この違いが退去コストを大きく左右するため、契約前に自社がどちらの義務を負うのかを必ず確認しましょう。
| 観点 | スケルトン戻し | 現状渡し(居抜き渡し) |
|---|---|---|
| 戻す状態 | 内装を撤去し、コンクリート躯体(骨組み)まで戻す | 造作を残したまま引き渡す |
| 退去コスト | 撤去・処分費が発生し、負担が大きくなりやすい | 撤去が不要または限定的で、負担を抑えやすい |
| 成立条件 | 契約でスケルトン返しが定められている | 貸主の承諾、または次テナントへの引き継ぎが前提 |
| セットアップとの関係 | 自社が追加した造作は撤去対象になりやすい | 貸主造作が残る前提のセットアップと相性が良い |
ポイントは、「現状渡し(造作を残して退去できる)」は自動的に認められるわけではなく、契約や貸主の承諾によって成立するということです。セットアップオフィスは貸主造作が残る前提のため現状渡しに近い扱いになりやすいものの、自社が後から追加した造作・配線・什器については撤去(スケルトン戻し相当)を求められることがあります。「どこまでが残せて、どこからが撤去義務か」の線引きが、次の章で解説するセットアップ特有の注意点です。セットアップと居抜きで原状回復の考え方がどう違うかはセットアップオフィスと居抜きオフィスを徹底比較でも整理しています。
セットアップオフィス特有の注意点(造作は誰の所有か・残置か撤去か)

セットアップで最も重要なのは「造作を誰が所有しているか」を切り分けることです。造作は大きく「貸主が最初から備えていた貸主造作」と「入居後に自社が追加した自社造作」に分かれ、原状回復での扱いがまったく異なります。ここが曖昧なまま契約すると、退去時に「どこまで撤去するのか」で揉める最大の原因になります。
造作は誰の所有か:貸主造作と自社造作を切り分ける
セットアップオフィスの内装・設備(間仕切り・会議室・配線・照明など)は、原則として貸主の所有物です。入居企業はそれを「借りて使っている」状態のため、退去時に自分で撤去する必要は基本的にありません。これがセットアップの原状回復が軽くなりやすい理由です。
一方、入居後に自社の都合で追加・変更した部分は自社造作となり、退去時に撤去・復旧を求められるのが一般的です。たとえば次のようなものが該当します。
- 自社で増設した間仕切り・個室・電話ブース
- 追加した電源・LAN配線・サーバーラック用の設備
- 壁面の造作・ロゴサイン・塗装・壁紙の張り替え
- 持ち込んだ什器のうち、壁や床に固定した造作物
つまり「貸主造作=残置(残してよい/残すべき)」「自社造作=撤去(元に戻す)」が基本の考え方ですが、この境界は物件ごと・契約ごとに異なります。入居時の状態がどこまでで、自社がどこから手を加えたのかを、書面と写真で残しておくことが後々のトラブル防止につながります。
残置か撤去か:入居時の「原状」を記録しておく
原状回復は「入居時の原状に戻す」ことですが、セットアップではその「原状」がすでに内装のある状態です。だからこそ、入居時点でどんな造作・設備が備わっていたかを明確に記録しておくことが重要になります。記録が曖昧だと、退去時に「もともと無かった造作だから撤去してほしい」「いや最初からあった」という認識相違が起きやすくなります。
実務では、契約時に貸主・借主の双方で入居時の現況(写真・図面・設備リスト)を確認し、書面に残すことをおすすめします。可能であれば、契約書や別紙に「貸主造作の範囲」「自社が原状回復義務を負う範囲」を明記しておくと、退去時の判断がスムーズです。
工事区分(A・B・C工事)も原状回復に影響する
オフィスの内装工事は、費用と業者の決め方によってA工事・B工事・C工事に区分されるのが一般的です。原状回復でどの区分に当たるかによって、業者を自由に選べるか・費用をどこまで抑えられるかが変わるため、契約前に押さえておきたいポイントです。
- A工事:ビル本体に関わる工事。貸主が費用を負担し、貸主が業者を手配します。
- B工事:借主の要望による工事だが、防災・空調・電気など建物設備に関わるため貸主指定の業者が施工し、費用は借主負担となる区分。原状回復工事はこのB工事に該当することが多く、業者を選べず相見積もりが取りにくいため割高になりやすい点に注意します。
- C工事:借主が費用を負担し、借主が業者を手配できる工事。内装の一部などが該当します。
原状回復の見積もりが高く感じられる背景には、このB工事(貸主指定)の仕組みがあることが少なくありません。契約前に「原状回復はどの区分で、業者を選べるのか」を確認しておくと、退去コストの見通しが立てやすくなります。
会計・資産上の扱いも整理しておく
造作の所有区分は、退去時のコストだけでなく会計・税務にも関わります。貸主造作は自社の資産にならない一方、自社で追加した造作は資産計上・減価償却の対象になることがあります。什器もリースか買取かで月額や退去時の扱いが変わります。会計・税務の具体的な処理は個別事情によって異なるため、顧問税理士など専門家に確認するのが安全です。
契約書のチェックポイント(原状回復条項チェックリスト)

退去コストは、入居時の「契約書の確認」でほぼ決まります。原状回復に関する条項は、金額が大きくなりがちなわりに見落とされやすい部分です。契約前に、少なくとも次の項目を書面で確認しておきましょう。
| チェック項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 原状回復の範囲 | スケルトン戻しか現状渡しか。貸主造作は残置でよいか、自社造作はどこまで撤去義務があるか。 |
| 「原状」の定義 | 「入居時の状態」がどの状態を指すか。設備リストや図面で特定されているか。 |
| 通常損耗・経年劣化の扱い | クロスや床の経年劣化・通常使用分まで借主負担とされていないか。 |
| 指定業者の有無 | 原状回復工事が貸主の指定業者に限定されているか。相見積もりは可能か。 |
| 退去時の精算条件 | 敷金・保証金からの控除の有無と範囲。精算のタイミングと明細の出し方。 |
| 解約予告期間 | 解約の何ヶ月前までに通知が必要か(3〜6ヶ月などが一般的/物件による)。 |
| 中途解約・違約金 | 契約期間内に解約する場合の違約金・預託金の扱いの有無と金額。 |
| 原状回復の期限 | 退去日までに工事を完了する必要があるか。工事期間中の賃料負担はどうなるか。 |
| 入居時現況の記録 | 写真・書面で現況を残せるか。貸主と共有できるか。 |
特に注意したいのが「指定業者」と「原状回復の範囲」の2点です。指定業者に限定されていると相見積もりが取りにくく、見積金額を検証しづらくなります。また、範囲の記述が「原状に復する」だけの曖昧な表現だと、退去時に貸主・借主で解釈が食い違いやすくなります。曖昧な条項は、契約前に「具体的に何をどこまで戻すのか」を書面で明確化するよう依頼するのが安全です。不明点があれば、仲介会社や専門家に確認しましょう。
退去コストを抑えるには

退去コストを抑える最大のコツは、退去時ではなく「入居前」に動くことです。原状回復の範囲を契約で明確化し、入居時の現況を記録しておくだけで、退去時の交渉の土台が大きく変わります。具体的には次のような対策が有効です。
- 入居前に原状回復範囲を書面で確定する:「貸主造作は残置、自社追加分のみ撤去」といった線引きを契約書または別紙に明記してもらう。退去時の解釈のブレを最小化できます。
- 入居時の現況を写真・図面で記録する:どこまでが最初からあった造作かを客観的に残すことで、「もとから無かった」という主張への反証になります。
- 経年劣化・通常損耗の負担を事前に合意する:クロスや床の通常使用分まで一律で借主負担にされていないか確認し、合意内容を書面に残す。
- 可能な範囲で相見積もりを取る:指定業者以外の見積もりが取れる契約なら、複数社で比較して不要な工事を精査する。指定業者限定の場合も、見積明細の内訳を確認する。
- 造作を残せないか相談する:自社追加分でも、次テナントや貸主が使える設備なら「残置してよい(撤去不要)」と交渉できる場合があります。撤去費と処分費を丸ごと圧縮できる余地があります。
- 入居中のメンテナンスを丁寧に:日常の使い方や小まめな補修で、余計な損耗による追加費用を防ぎます。
これらは、契約前の段階で仲介会社に原状回復の範囲を確認してもらうことで、より確実になります。範囲が曖昧なまま契約すると、退去時に想定外の請求を受けるリスクが高まります。費用全体の見通しはセットアップオフィスの初期費用・賃料相場もあわせてご確認ください。仲介手数料を含めた総額を抑えたい場合、東京オフィスチェックは仲介手数料無料でセットアップ物件をご案内しています。
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セットアップの原状回復でよくある失敗と回避策

原状回復まわりで実際に起こりがちなつまずきと、その防ぎ方をまとめます。多くは「入居前の契約確認」と「現況の記録」で予防できます。
- 貸主造作と自社造作の認識相違で、想定外の撤去費を請求された:「もとからある造作だと思っていた部分が自社負担扱いだった」。→ 入居時に貸主造作の範囲を書面・図面で確定し、現況を写真で記録しておく。
- 「現状渡しで退去できる」と思い込んでいたらスケルトン戻しだった:契約書の原状回復条項を読み込まず、退去時に高額な撤去費が発生。→ 契約前に「スケルトン戻しか現状渡しか」を必ず確認し、曖昧なら書面で明確化する。
- 指定業者の見積もりが高く、相見積もりが取れなかった:工事業者が貸主指定で、金額を検証できないまま支払うことに。→ 契約時に指定業者の有無と、見積明細を確認できるかをチェックする。
- 自社で増設した配線・什器の撤去範囲が曖昧で精算が長引いた:どこまで戻すかの線引きがなく、退去間際に貸主と交渉が難航。→ 追加した造作・配線・什器の扱いを入居時に契約で明確化しておく。
- 解約予告期間を見落とし、退去が希望どおりにいかなかった:予告期間が長く、想定より賃料負担が延びた。→ 解約予告期間と中途解約時の条件を契約前に確認する。
- 原状回復の工事期間分の賃料まで負担することになった:退去日後も工事期間中は賃料が発生する契約だった。→ 原状回復の期限と工事期間中の賃料の扱いを事前に確認する。
いずれも共通するのは、「退去時に初めて考えるのでは遅い」ということです。原状回復は入居前の契約条件でほぼ決まるため、物件選びと契約の段階で、範囲・精算・指定業者・解約条件までまとめて確認しておくことが最大の防御になります。
よくある質問(FAQ)
セットアップオフィスの原状回復は本当に軽いのですか?
貸主造作が残る前提のため、撤去範囲が限定され軽くなる場合があります。ただし実際の負担は契約内容によって決まり、自社で追加した造作は撤去を求められることが一般的です。「軽い」と決めつけず、契約前に範囲を確認することが必須です。
スケルトン戻しと現状渡しの違いは何ですか?
スケルトン戻しは内装をすべて撤去して骨組みの状態に戻すこと、現状渡しは造作を残したまま引き渡すことです。どちらになるかは契約で決まり、現状渡しは貸主の承諾や次テナントへの引き継ぎが前提になることが多いです。
セットアップで自社が追加した内装や什器はどうなりますか?
入居後に自社の都合で追加・変更した造作・配線・什器は自社造作となり、退去時に撤去・復旧を求められるのが一般的です。追加した部分の扱いは、入居時に契約で明確化しておくことが大切です。
原状回復の費用相場はどのくらいですか?
区画の広さ・工事範囲・ビルのグレード・工事時間帯などで大きく変動し、一律には決まりません。一般的なオフィスでは坪あたり数万円規模が目安として語られることもありますが、実額は物件と契約条件によるため、範囲を確定したうえで見積もりを取るのが確実です。
原状回復で確認すべき契約条項は?
原状回復の範囲(スケルトン戻しか現状渡しか)、「原状」の定義、通常損耗・経年劣化の扱い、指定業者の有無、退去時の精算条件、解約予告期間、中途解約時の違約金などです。曖昧な表現は書面で明確化を依頼しましょう。
指定業者の見積もりが高い場合、相見積もりは取れますか?
契約で工事業者が貸主指定に限定されている場合、相見積もりが取りにくいことがあります。契約前に指定業者の有無と、見積明細の内訳を確認できるかをチェックしておくと、金額を検証しやすくなります。
退去コストを抑えるにはどうすればいいですか?
入居前に原状回復範囲を書面で明確化し、入居時の現況を写真・図面で記録しておくことが最も効果的です。経年劣化の負担の合意、相見積もり、造作の残置交渉、日常メンテナンスもあわせて有効です。契約前に仲介会社へ範囲を確認してもらうのもおすすめです。
原状回復のトラブルを避けるには誰に相談すればいいですか?
契約条件の確認は、物件を扱う仲介会社に相談するのが近道です。会計・税務や法的な論点は、顧問税理士や弁護士など専門家に確認すると安心です。東京オフィスチェックでも、契約前の原状回復まわりの確認をサポートしています。
まとめ

セットアップオフィスの原状回復は、貸主造作が残る前提で軽くなる場合がありますが、最終的な負担は契約内容次第です。カギは「造作は誰の所有か(貸主造作か自社造作か)」「残置か撤去か」を切り分け、入居前に契約で範囲を明確化しておくこと。原状回復の範囲・精算条件・指定業者・解約条件を書面で確認し、入居時の現況を記録しておけば、退去時の想定外コストは大きく防げます。
契約条件のチェックや、原状回復の負担が読みやすい物件選びは、非公開物件も含めて比較できる仲介会社に相談するのが近道です。東京オフィスチェックは、東京都心のセットアップオフィスを仲介手数料無料でご案内しています。まずは条件(エリア・広さ・予算・入居時期)を整理して、物件一覧からお気軽にご相談ください。
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