【テナント入居】スプリンクラー設置基準とは?消火器・誘導灯・消防検査の流れも解説
オフィスを移転するとき、入居予定のビルにスプリンクラーがあるのか、自社の内装工事でどこまで手を入れる必要があるのかは、契約前に見えにくいポイントです。設置基準を知らないまま進めると、契約後に追加工事の見積もりが出て、予算や入居日がずれ込むことも少なくありません。この記事では、オフィスのスプリンクラーの設置基準を消防法に沿って整理し、消防設備の基礎から、レイアウトを決める際の注意点、手続きの全体像までまとめました。東京のオフィスビルで実際に起こりやすい場面を想定し、専門用語はできるだけかみ砕いて解説します。移転を担当する総務の方が、物件選びから工事の段取りまでを見通せる内容です。
オフィスにスプリンクラーは必要?設置基準で決まる条件

オフィスでスプリンクラーが必要になる条件を、ビルの用途・階数・窓の状況から順に確認します。
事務所単独のビルでは「11階以上の階」が設置基準の基本になる
事務所は消防法施行令の別表第一で「15項」に分類され、スプリンクラー設備(令第12条)は、地上11階以上の階に設置が義務づけられています(※1)。事務所には延べ面積による設置基準がなく、10階以下の階は、ビル全体がどれだけ広くても、事務所だけであれば設置の対象になりません。借りるフロアが11階以上かどうかが、最初の分かれ目です。
ただし、11階以上でも、耐火構造の壁・床などで細かく区画した部分は、設置を免除できる規定があります(※2)(※3)。このため、ヘッドの有無は階数だけで決めつけず、入居予定のフロアで個別に確認する必要があります。
※1「消防法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※3「第2‐4 省令第13条区画|札幌市消防局」 https://www.city.sapporo.jp/shobo/yobo/setsubi/setsubi/documents/02-04.pdf
飲食店・物販店が入る複合用途ビルは面積によって設置対象になる
同じビルに飲食店(3項)や物販店(4項)が入ると、ビル全体が特定用途を含む複合用途防火対象物(16項イ)として扱われます。この場合、事務所部分だけを借りるテナントでも、階ごとの特定用途部分の面積に応じて、スプリンクラーの設置対象になります(※1)(※4)。
<16項イの主なスプリンクラー設置基準>
- 特定用途が3,000㎡以上:その部分がある階に設置する
- 4階〜10階:1,500㎡以上の階(物販は1,000㎡)
- 地階・無窓階:特定用途が1,000㎡以上の階
- 地階を除く階数が11以上のビル:全ての階に設置する(特定用途部分が小規模な場合は、10階以下の部分が除かれることがある)
特定用途の部分が小規模な場合は、延べ面積の10分の1以下かつ300㎡未満なら主たる用途(事務所)に従属するとみなされることがあります。ただし、用途によっては適用されず、最終的な判断は消防署が行うため、テナントの入れ替えがあるビルでは事前の確認が欠かせません(※5)。
※1「消防法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※4「消防用設備等の設置基準(16項イ)|日本消防設備安全センター」 https://www.fesc.or.jp/sp_navi/list02/pdf/data16_1_1.pdf
※5「用途区分の判定に係るみなし従属規定等の見直しについて|消防庁」 https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento107_11_shiryo1_3_2.pdf
地階・無窓階は窓の大きさや面積で判定が変わるため注意が必要
無窓階とは「窓のない階」ではなく、避難や消火活動に有効な開口部が、床面積に対して一定以上ない階のことです。窓が並んでいても、格子がある、開かない、窓の外に立てる場所がないといった場合は、開口部として数えられず、無窓階と判定されることがあります(※2)。
<10階以下の階が普通階になる条件>
- 大きな開口:直径1m円か75×120cmを2つ以上
- 面積:50cm円の開口合計が床面積の1/30超
- 位置:開口部の下端が床面から1.2m以内
- 構造:格子がなく外から開放・破壊できる
- 外部:道や幅1m以上の空地に面している
11階以上の階は、直径50cm以上の円が入る開口部の合計が床面積の30分の1を超えれば普通階で、外部の空地に面する条件は問われません(※2)。また、消防本部の運用基準では、網入りガラスのはめ殺し窓は開口部に算入できないとされるのが一般的です(※6)。最終的な判定は管轄の消防署に確認してください。
事務所だけのビルでは、無窓階でもスプリンクラーの面積基準は設けられていません。一方、複合用途ビルでは前項の基準に影響します。無窓階の判定は、消火器や自動火災報知設備など、他の設備の基準にも関わります(次章で解説)。
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※6「無窓階|徳島市消防局」 https://www.city.tokushima.tokushima.jp/anzen/shoubo_bousai/shoubou/report/bouka/unyoukijyun.files/musoukai.pdf
入居予定のビルにスプリンクラーが設置済みかを確認する方法
設置の有無は、物件情報と現地、ビル側への問い合わせを組み合わせると確実に確認できます。スプリンクラーヘッドは、天井に取り付けられた小さな金属製の器具で、先端に感熱部があります。
<確認の手順>
- 募集図面:設備欄や仕様書の記載を見る
- 内見:天井のヘッドの有無を目で確認する
- 管理会社:消防用設備等の設置状況を聞く
- 消防署:予防課で建物の用途と設備を確認する
あわせて、同じビルに飲食店や物販店が入っているかも確認してください。前述のとおり、他のテナントの用途によって、ビルの設置基準が変わるためです。東京消防庁も、入居前に建物の消防法上の用途と、設置済みの消防用設備等を確認するよう案内しています(※7)。
※7「テナント入居の際の手続き|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/kanda/tenantnyuukyo.html
スプリンクラー以外にオフィスで必要な消防設備の設置基準

オフィスに設置が求められる消火器・誘導灯・自動火災報知設備の基準を、設備ごとに解説します。
消火器の設置基準と必要本数の考え方
事務所は、延べ面積が300㎡以上であれば消火器の設置対象です。300㎡未満でも、地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50㎡以上なら、その階に設置が必要になります(※1)(※8)。
必要本数は、床面積を「算定基準面積」で割った能力単位で決まります。事務所の算定基準面積は200㎡で、主要構造部が耐火構造かつ内装が難燃材料以上であれば400㎡まで広がります(※2)。たとえば該当する耐火構造のオフィスで延べ面積が1,000㎡なら、必要な能力単位は2.5以上です。
<消火器の設置ルール>
- 歩行距離:各部分から20m以下になるよう配置する
- 設置階:各階ごとに設置する
- 高さ:床面から1.5m以下に置く
- 標識:「消火器」の標識を見やすく付ける
歩行距離は、壁や什器を回り込んだ実際に歩ける経路で測ります(※8)。能力単位と歩行距離の両方を満たす必要があり、小規模なフロアでは歩行距離の条件で本数が決まる場合もあります。
※1「消防法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※8「第1 消火器具に関する設置基準|宜野湾市消防本部」 https://www.city.ginowan.lg.jp/material/files/group/39/syoukakigu.pdf
誘導灯の設置基準と設置が免除される主な条件
事務所の避難口誘導灯と通路誘導灯は、地階・無窓階・11階以上の部分が設置対象です。無窓階に当たらない10階以下の階は誘導灯の対象外ですが、誘導標識は設置対象になっています(※1)。ただし、飲食店などが入る複合用途ビル(16項イ)では、全ての階に誘導灯が必要です(※1)。
免除の条件は、地階と無窓階を除く階で、居室の各部分から主要な避難口を見通せることが前提です(※2)。
<誘導灯・誘導標識の免除条件(歩行距離)>
- 避難口誘導灯:避難階20m以下、他の階10m以下
- 通路誘導灯:避難階40m以下、他の階30m以下
- 誘導標識:主要な避難口まで30m以下
- 共通の前提:居室の各部分から避難口を見通せる
見通しは、居室の出入口からだけでなく、居室の各部分から避難口だと直接判別できる必要があります(※9)。免除を前提にしたレイアウトでは、この見通しが保たれているかが判断の分かれ目です。
※1「消防法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※9「第16 誘導灯及び誘導標識|横浜市消防局」 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/shobo-kyukyu/kanri/shobo-setsubi.files/0201_20250325.pdf
自動火災報知設備(自火報)の設置基準と感知器の配置ルール
事務所の自動火災報知設備は、延べ面積が1,000㎡以上なら設置が必要です。1,000㎡未満でも、地階・無窓階・3階以上で床面積が300㎡以上の階と、11階以上の全ての階は設置対象になります(※10)。複合用途ビル(16項イ)の場合は、延べ面積300㎡以上から対象です(※11)。
感知器は、壁や梁で区切られた「感知区域」ごとに設けるのが基本です。配置には、取付位置に関する次のルールがあります(※12)。
<感知器の配置ルール>
- 取付位置:熱感知器の下端は取付け面の下0.3m以内
- 空調吹出口:吹出口から1.5m以上離す
- 維持管理:点検ができる場所に設ける
- 感知区域:壁や梁で区切られた区域ごとに設ける
天井の高さや構造によって感知器の種類や個数が変わるため、実際の設計は消防設備士が行います。
※10「消防用設備等の設置基準(15項)|日本消防設備安全センター」 https://www.fesc.or.jp/sp_navi/list02/pdf/data15_1.pdf
※11「消防法施行令第9条の解説|津市消防本部」 https://www.info.city.tsu.mie.jp/www/contents/1702622636511/simple/shoubouhousekoureidai9zyounokaisetu.pdf
※12「自動火災報知設備の設置基準|日本消防設備安全センター」 https://www.fesc.or.jp/ihanzesei/symposium/pdf/S-seminer_R6_5.pdf
間仕切り工事やレイアウト変更がスプリンクラー設置基準に与える影響

間仕切りやレイアウトの変更が、ヘッドや感知器の配置、工事の区分と費用にどう影響するかを解説します。
間仕切りの新設で散水障害や未警戒区域が生じるおそれがある
天井まで達する間仕切りを新設すると、壁の向こう側にヘッドの水が届かない「散水障害」が生じます。標準型ヘッドの有効散水半径は2.3m(高感度型は2.6m)で、壁がこの範囲を遮ると、その部分は防護範囲を満たさなくなります(※2)(※13)。天井まで立ち上げない間仕切りでも、原則として散水障害が生じないようにヘッドを配置する必要があります(※14)。
自動火災報知設備にも影響があります。天井から0.4m以上突き出した梁や、天井まで達する間仕切りで部屋が区切られると、感知区域が分かれ、感知器のない区域(未警戒区域)ができるためです。差動式分布型と煙感知器は0.6m以上が基準です(※12)。間仕切りの上部に一定のすき間(例:高さ0.2m以上×幅1.8m以上)を設ければ、隣り合う感知区域を1つとして扱える運用もありますが、基準は消防本部ごとに異なるため、事前の相談が必要です(※15)。
<間仕切り新設で起きやすい問題>
- 散水障害:壁が有効散水半径の水を遮る
- 未警戒区域:新しい区域に感知器がない
- ヘッド周辺:下方0.45m・水平0.3mに物を置けない
最後のヘッド周辺の空間は、間仕切りだけでなく、背の高い書棚やキャビネットの配置でも問題になります(※2)。
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※12「自動火災報知設備の設置基準|日本消防設備安全センター」 https://www.fesc.or.jp/ihanzesei/symposium/pdf/S-seminer_R6_5.pdf
※13「消防予第115号(閉鎖型スプリンクラーヘッド)|消防庁」 https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/080611yo115.pdf
※14「第3 スプリンクラー設備|浜松市消防局」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/50213/setsubikijyun03-03.pdf
※15「第11 自動火災報知設備|福岡市消防局」 https://www.city.fukuoka.lg.jp/syobo/shido/anzen-anshin/kakuron_11.pdf
会議室・個室の新設でヘッドの増設・移設が必要になるケース
会議室や役員室のように、天井まで壁で囲った個室を設ける計画では、ヘッドの増設や移設が必要になることが多くなります。
<増設・移設が必要になりやすいケース>
- 天井までの個室:囲った部屋の中にヘッドがない
- ヘッド直下の壁:壁がヘッドの真下や近くを通る
- 大きな棚・ダクト:幅か奥行き1.2m超の物の下
- 天井の変更:ヘッドと天井面が30cm超離れる
幅または奥行きが1.2mを超えるダクトや棚がある場合は、その下にもヘッドが必要です。また、ヘッドの散水盤と天井面の距離は30cm以下が原則です(※2)。
ヘッドの増設や移設は消防設備士が行う工事で、着手前に消防署への届出が必要です(届出の流れは後述)。工事で消防用設備等を停止する場合は、停止状況によって工事中の消防計画が必要になることがあります(※7)。
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※7「テナント入居の際の手続き|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/kanda/tenantnyuukyo.html
スプリンクラー工事は「B工事」になることが多く費用はテナント負担
オフィスの工事は、発注者・費用負担・業者の選び方で、A工事・B工事・C工事に分かれます。
<工事区分の違い>
- A工事:ビルオーナーが発注し、費用も負担する
- B工事:テナント費用負担、業者はオーナー指定
- C工事:テナント費用負担、業者も自社で選べる
スプリンクラーや非常照明などの防災設備は、建物全体の安全に関わるため、B工事に区分されるのが一般的です。費用はテナント負担ですが、業者はオーナー側が指定するため、相見積もりが取りにくく、高額になりやすい傾向があります。
区分はビルごとに異なります。賃貸借契約書や工事区分表で、ヘッドや感知器の移設・増設がB工事になるかを、契約前に確認しておくと、想定外の出費を防げます。
スプリンクラーの設置基準を満たしつつ工事費用を抑えるポイント

設置基準を守りながら、ヘッドの増設や移設にかかる費用を抑える考え方を、3つの視点で解説します。
防火区画やヘッド不要部分の規定を活用して増設を減らす
スプリンクラーが必要なフロアでも、火災の危険が少ない場所や、放水で二次被害が出る場所には、ヘッドを設けなくてよいと定められています(※2)。
<ヘッドを設けなくてよい主な部分(規則13条3項)>
- 便所・浴室・階段:火災の危険が少ない場所である
- 通信機器室など:電子計算機器室などを含む
- 機械室・電気設備室:エレベーター機械室、変圧器の設置場所など
- 昇降路・ダクト:エレベーター昇降路、パイプダクトなど
条文は「その他これらに類する」という表現を含むため、新設する書庫やサーバー室が該当するかは、用途と実態で判断されます。消防署の見解が分かれることもあるため、計画段階で確認してください。
もう1つは、先にふれた防火区画による免除です。11階以上の階でも、耐火構造の壁・床で床面積100㎡以下ごとに区画するなどの条件を満たせば、設置を除外できます(※3)(※16)。ビルによっては、この区画でヘッドを省略している階があり、区画壁や防火戸を変更すると、設置の条件が崩れるおそれがあります。間仕切りの位置は、既存の区画を保つように決めるのが安全です。
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※3「第2‐4 省令第13条区画|札幌市消防局」 https://www.city.sapporo.jp/shobo/yobo/setsubi/setsubi/documents/02-04.pdf
※16「第9 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造の取扱い|高松市消防局」 https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kurashi/shobo/shobo/shobokyoku/kakuka/yobouka/shobosetsubi/gijyutukijyunn_top.files/3syoudai9.pdf
既存ヘッドの位置を活かした間仕切り配置で移設費用を抑える
ヘッドは、天井面に格子状に並んでいます。水平距離2.3mの標準型を正方形に並べた場合、ヘッド同士の間隔は最大で約3.25mです(※14)。この並びに沿って壁の位置を決めれば、ヘッドを動かす工事を減らせます。
まず、ビル管理会社から、ヘッドや感知器、空調の吹出口の位置が分かる天井伏図を受け取ります。そのうえで、間仕切りを重ねて確認します。
<配置の工夫>
- 壁の位置:ヘッドの間隔に合わせて引く
- 個室の大きさ:ヘッドを含むまとまりで区切る
- 天井設備:照明や空調の位置とも突き合わせる
個室の広さや形が先に決まっていると、ヘッドの位置と合わず、移設が増えます。先に天井設備の位置を把握し、部屋の大きさや形を調整する方が、費用を抑えやすくなります。最終的な可否は、防災設備会社と消防署の確認が必要です。
※14「第3 スプリンクラー設備|浜松市消防局」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/50213/setsubikijyun03-03.pdf
設置基準を踏まえたレイアウト図を入居前に作成しておくと安心
契約後にヘッドや感知器の移設が分かると、追加のB工事費用や工期の延長として、そのまま負担に変わります。契約前にレイアウト図を作っておけば、追加工事が少ない物件かどうかを、比較の材料にできます。
<レイアウト図に重ねる項目>
- 天井設備:ヘッド・感知器・吹出口の位置
- 避難設備:誘導灯の位置と消火器の配置
- 防火設備:防火戸・防火シャッターの可動範囲
- 防火区画:区画壁の位置と、区画の条件
図面は、ビルから天井伏図や防火区画が分かる図面、工事区分表を受け取ってから作成します。家具と間仕切りを重ねたうえで、ビル管理会社と防災設備会社に確認してもらうと、手戻りを減らせます。
消防署への届出から消防検査・入居後の点検までの流れ

工事前の届出から、工事後の消防検査、入居後の点検と、怠った場合のリスクまでを時系列で解説します。
届出が必要な工事と提出書類(工事計画届・着工届・設置届)
間仕切り工事やヘッドの移設では、工事の前と後に複数の届出が必要です。全国共通の期限は、着工届が着手の10日前まで、設置届が工事完了から4日以内です(※2)(※17)。これに東京都の火災予防条例による届出が加わります。ここでは東京消防庁管内を例に整理します。
<主な届出と期限>
- 工事等計画届:着手の7日前まで(間仕切り変更など)
- 設置計画届・着工届:着手の10日前まで
- 設置届:工事完了から4日以内
- 使用開始届:使用開始の7日前まで
工事等計画届は、修繕や模様替え、間仕切り変更の前に提出します(※18)(※19)。ヘッドなど甲種消防設備士でなければ工事できない設備は着工届、それ以外の設備工事は設置計画届が対象です(※20)。使用開始届は、入居して使い始める7日前までに出します。
提出書類は、工事等計画届では届出書、概要表、平面図が中心です(※21)。着工届には平面図、系統図、計算書などが必要で(※20)、設置届には図面と試験結果が添付されます(※2)。工事が軽微な場合は着工届を省略できますが、設置届は、届出の対象になる建物であれば工事の規模にかかわらず必要です。対象かどうかは管轄の消防署に確認してください(※20)。届出者は、工事等計画届が工事を依頼した人(※18)、着工届が工事を担当する甲種消防設備士(※20)、設置届が建物の関係者です(※17)。ビル側とテナントのどちらが出すかは、工事前に決めておきます。
※2「消防法施行規則|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※17「消防法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
※18「防火対象物工事等計画届出書|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_03/002.html
※19「新たにテナントを使用する皆様へ|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenants.html
※20「工事整備対象設備等着工届出書|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_04/002.html
※21「よくあるご質問|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/usigome/q-a-yobou.html
工事完了後の消防検査から検査済証交付までの流れ
工事が終わると、関係者による自主チェックのあと、設置届を提出し、消防署の検査を受けます。書類の審査と現地の検査で問題がなければ、検査済証が交付されます(※22)。東京消防庁の入居工事では、検査後に「検査結果通知書」が交付され、届出書類とともに保管するよう案内されています(※7)。
検査の対象は、特定防火対象物で延べ面積300㎡以上のものと、非特定防火対象物で延べ面積300㎡以上かつ消防署長が指定したものなどです(※1)。ただし、居抜きで従前の設備をそのまま使う場合などは、検査が省略されることがあります(※7)。
<検査で確認される主な内容>
- 設置状況:ヘッド・感知器などの位置と数
- 作動:感知器や誘導灯の作動
- 図面との整合:届出図面と現場が合っているか
- 書類:試験結果報告書などの内容
消防署の検査は使用開始前に受ける必要があるため(※19)、入居日は検査の日程に余裕を持って組むと安心です。
※1「消防法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
※7「テナント入居の際の手続き|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/kanda/tenantnyuukyo.html
※19「新たにテナントを使用する皆様へ|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenants.html
※22「消防用設備等の設置手順|消防庁」 https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/pdf/09-1-2.pdf
入居後の消防設備点検の義務と頻度(機器点検・総合点検)
消防用設備等は、設置したあとも定期的な点検と、結果の報告が義務づけられています。義務を負うのは、建物の所有者・管理者・占有者などの関係者です(※23)(※17)。
<点検と報告の頻度>
- 機器点検:6か月に1回
- 総合点検:1年に1回
- 報告(事務所のみ):3年に1回
- 報告(特定用途を含む):1年に1回
報告が3年に1回なのは、あくまで消防署への報告の周期です。点検そのものは、機器点検6か月・総合点検1年で続けます(※23)。飲食店などが入る複合用途のビルは特定防火対象物として扱われ、報告は毎年です。一定規模以上のビルでは、消防設備士や消防設備点検資格者による点検が必要です(※23)。多くのビルでは管理会社が一括で実施するため、テナントは点検日の立ち入りへの協力と、費用負担のルールを確認しておきます。
※17「消防法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
※23「消防用設備等点検報告制度|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenken_houkoku.html
届出や点検を怠った場合に生じるリスクと罰則
届出や点検を怠ると、消防署からの指導に加え、消防法に基づく罰則の対象になります(※17)。法人の従業者が業務で違反した場合は、行為者だけでなく法人にも罰金が科されます(両罰規定)(※24)。
<主な罰則>
- 点検の未報告・虚偽報告:30万円以下の罰金か拘留
- 設置届・着工届の未提出:30万円以下の罰金か拘留
- 維持命令違反:30万円以下の罰金か拘留
- 設置命令違反:1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金
設置命令に違反した場合、法人には3,000万円以下の罰金が科されます(※24)。2025年6月1日の刑法改正で懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されており、古い資料では「懲役」と書かれています(※25)。罰則が適用される前に、消防署から是正を求められるのが一般的です。ビルのオーナーや管理会社と、届出や点検の役割分担を契約時に確認しておくと、責任の所在が曖昧になるのを防げます。
※17「消防法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
※24「命令違反に対する罰則|福岡市消防局」 http://www.city.fukuoka.lg.jp/syobo/sasatsu/topics/documents/meireiihannbassokuichiran.pdf
※25「拘禁刑創設の趣旨|法務省」 https://www.moj.go.jp/content/001437235.pdf
まとめ:スプリンクラーの設置基準を踏まえたオフィスレイアウトは入居前の相談が安心
オフィスのスプリンクラーは、事務所だけのビルなら11階以上の階が基本で、飲食店などが入る複合用途ビルでは面積や階数で基準が変わります。間仕切りを新設すると、ヘッドや感知器の増設が必要になり、B工事として費用がかさむこともあります。工事前後の届出や入居後の点検も欠かせず、抜けがあると費用や工期に響きます。ただ、これらを移転前にすべて把握するのは容易ではありません。東京オフィスチェックは、物件のご紹介だけでなく、設置基準を考慮したレイアウト図の作成まで対応しており、追加工事を抑えた計画をご提案できます。オフィス移転でお悩みの際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
「スプリンクラーの設置基準や追加工事の費用が気になる」「移転すべきか悩んでいる」
そんなときは、ぜひ東京オフィスチェックまでお気軽にご相談ください。
▶ オフィス移転の無料相談はこちら

\ 専門スタッフにチャットで相談! /
希望条件をLINEで送るだけ。担当者が直接ご提案します
※24時間受付中(回答は営業時間内となります)




