オフィスの内装制限とは?使える素材・防火区画・緩和条件を解説

オフィスの内装制限とは?使える素材・防火区画・緩和条件を解説

オフィスの移転先が決まり、内装のデザインを詰める段階になると、「木目調の壁にしたい」「会議室を増やしたい」「LANケーブルを増設したい」といった要望が出てきます。ところが、その一つひとつが、火災時の安全を守る法令に触れることがあります。工事の途中や完了後に指摘されると、やり直しの費用がかさみ、入居日にも影響しかねません。とくに移転直前は工期に余裕がなく、手戻りの影響が大きくなります。本記事は、総務・経営企画のご担当者が図面を引く前に、自社の計画で何を確認すればよいかを具体的に判断できるよう、法令にもとづいて整理しました。発注前に一読しておくだけで、内装業者やビル管理会社との打ち合わせも進めやすくなります。

内装制限とは?建築基準法で定められたオフィス内装のルール

内装制限の目的と根拠法令、規制がかかる範囲を順に確認します。

内装制限とは、火災時に燃え広がりやすい内装材の使用を制限する規制

内装制限とは、建物内で火災が起きたときに、壁や天井を伝って炎が広がったり、煙や有毒ガスが大量に発生したりするのを防ぐため、仕上げ材の燃えにくさを定めた規制です。避難が完了するまでの時間を確保することが最大の目的で、建築基準法第35条の2とその施行令(第128条の3の2・第128条の4・第128条の5)が根拠になっています(※1)(※2)。

事務所の場合、規制がかかるかどうかは用途ではなく、ビル全体の規模や部屋の条件で決まります。借りる区画が小さくても、入居先のビルが対象であれば、テナントが行う内装工事にも適合が求められます。対象になる条件は、次の章で詳しく解説します。
※1「建築基準法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

内装制限は建築基準法、防炎物品は消防法と根拠となる法律が異なる

オフィスの防火対策は、根拠となる法律によって、規制の対象と確認先が分かれます。建築基準法が定める内装制限は、壁と天井という建物の一部の仕上げが対象で、設計図書の段階で建築主事や指定確認検査機関が適合を確認します。一方、消防法が定める防炎規制は、カーテンやじゅうたんなど後から持ち込む物品が対象で、使用状況は消防署の立入検査などで確認されます。

防火区画も、建築基準法施行令第112条に基づく別の規定です。同じ「防火」でも法律や窓口が違うため、内装計画では両方を並行して確認する必要があります。各規制の中身は、以降の章で個別に解説します(※2)(※3)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
※3「防炎防火対象物|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouen/p03.html

内装制限の対象は壁・天井の仕上げで、床は対象外

内装制限の対象となるのは、壁と天井(天井がない場合は屋根)の室内に面する部分の仕上げです。床は対象外のため、フローリングやタイルカーペットの素材は、内装制限では問われません。ただし、じゅうたん類は消防法の防炎規制を受ける場合があります(詳しくは防炎物品の章で解説)。

壁と天井のうち、回り縁や窓台といった部材は、どの区分でも対象から除かれます。また、大規模建築物などの居室では、床から1.2m以下の壁も対象外です。ただし、この1.2mの除外は無窓居室、火気使用室、廊下・階段などの通路には適用されず、壁全面が対象です。この除外部分は、素材選びの自由度が比較的高い部分です(※2)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

内装制限がかかるオフィスの建物・階・用途

オフィスが内装制限の対象になる4つのパターンを、条件とあわせて確認します。

階数と延べ面積が一定以上のオフィスビルは大規模建築物として対象になる

事務所は、劇場や病院、飲食店のような特殊建築物には含まれないため、用途だけで内装制限がかかることはありません。その代わりに、建物の階数と延べ面積が次の基準を超えると、大規模建築物として対象になります(※2)。

<大規模建築物の判定基準>

  • 3階以上:延べ面積500㎡超が基準である
  • 2階建て:延べ面積1,000㎡超が基準である
  • 平屋建て:延べ面積3,000㎡超が基準である

判定の単位は借りる区画ではなく、建物全体です。そのため、数十坪ほどの小さなオフィスでも、入居するビルが基準を超えていれば対象になります。対象の場合、居室の壁と天井は難燃材料以上(壁は床から1.2m以下を除く)で仕上げる必要があります。なお、同じビルに飲食店や物販店が入居している場合、その部分は特殊建築物として別の規制を受けます。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

窓のない大きな会議室や執務室は無窓居室として対象になる

大規模建築物に当たらないビルでも、無窓居室があれば内装制限を受けます。無窓居室とは、床面積が50㎡を超え、開放できる窓などのうち、天井または天井から下方80cm以内にある部分の面積の合計が、床面積の50分の1に満たない居室のことです。ただし、天井の高さが6mを超える居室は除かれます(※2)。

オフィスで該当しやすいのは、ビルの中心部(コア側)にある大きな会議室や執務室です。窓があっても、はめ殺し窓のように開放できないものは面積に算入されません。該当した居室では、その居室と、居室から地上へ通じる通路の壁・天井を、準不燃材料以上で仕上げる必要があります。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

コンロのある給湯室などの火気使用室は規模を問わず対象になる

火気使用室とは、かまど、こんろ、ストーブ、炉、ボイラーなど、火を使う設備や器具を設けた調理室、乾燥室、ボイラー室、作業室などです。建物の規模による基準はなく、壁と天井を準不燃材料以上で仕上げる必要があります。オフィスでは、ガスコンロを置いた給湯室や簡易キッチンが代表例です(※2)。

ただし、主要構造部を耐火構造とした建築物は対象外とされているため、耐火構造のオフィスビルでは適用されないケースが多くなります。また、IHクッキングヒーターは火を使う設備として扱われないのが一般的ですが、審査機関によって判断が異なる場合があるため、事前の確認が確実です。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

廊下・階段などの避難経路は居室より厳しい基準が適用される

居室から地上へ通じる主たる廊下や階段などの通路は、居室より一段厳しい準不燃材料以上で仕上げる必要があります。避難時に、居室から出た煙や炎がもっとも集中する場所であり、ここが燃え広がると安全に逃げられなくなるためです(※2)。

オフィスでは、エレベーターホールや共用廊下、階段室が代表的です。専有部内でも、居室から出口へ向かう主な通路は避難経路として扱われる可能性があるため、専有部内の通路の扱いは事前に確認しておきましょう。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

オフィス内装で使ってはいけない素材と使える仕上げ材

対象部分に使える材料の区分と、避けるべき素材、デザインとの両立方法を整理します。

内装制限の対象部分に使えるのは不燃材料・準不燃材料などの認定品に限られる

内装制限の対象部分に使える材料は、燃えにくさに応じて次の3区分に分けられます。いずれも、国の告示で定められた材料か、国土交通大臣の認定を受けた製品に限られます(※1)(※2)(※4)。

<防火材料の区分>

  • 不燃材料:加熱開始後20分間、要件を満たす
  • 準不燃材料:加熱開始後10分間、要件を満たす
  • 難燃材料:加熱開始後5分間、要件を満たす

性能の高さは不燃、準不燃、難燃の順で、上位の材料は下位の要求も満たします。準不燃材料が求められる場所には不燃材料も使えますが、逆はできません。石膏ボードは厚さで区分が変わり、12mm以上で不燃材料、9mm以上で準不燃材料、7mm以上で難燃材料として扱われます(ボード用原紙の厚さの条件あり)(※4)。市販の内装材は、カタログの認定番号(不燃はNM、準不燃はQM、難燃はRMで始まる番号)で区分を確認できます(※5)。
※1「建築基準法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
※4「不燃材料・準不燃材料・難燃材料を定める件(平成12年建設省告示第1400号・第1401号・第1402号)|国土交通省」 https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006465.pdf/https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006466.pdf/https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006467.pdf
※5「構造方法等の認定に係る帳簿【防火材料】|国土交通省」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/030_boukazairyou.pdf

認定のない無垢材・化粧合板・装飾パネルは壁・天井に使ってはいけない

内装制限の対象となる壁・天井には、防火性能の認定や告示への適合がない素材は使えません。オフィスでうっかり選びやすいのは、次のような素材です。

  • 無垢材:処理のない木材は燃えやすい
  • 化粧合板:一般の合板は難燃材料でない
  • 装飾パネル:発泡系などは認定が必要である

これらの素材も、不燃処理を施して認定を取得した製品であれば、使用できる場合があります。見た目が似ていても、認定の有無で可否が分かれるため、認定番号と施工条件を必ず確認してください。また、壁紙は単体ではなく、下地材との組み合わせで防火性能が認定されるのが一般的です。指定と異なる下地に貼ると、適合しなくなるおそれがあります。

避難経路の壁・天井に難燃材料を使うのはNG

難燃材料は居室の壁・天井には使えますが、避難経路となる通路や階段では認められません。ここでは準不燃材料以上が必要で、同じオフィスの中でも、執務室と通路の仕様を分けて考える必要があります(※2)。

実務でよく起きるのは、執務室に使う難燃仕様のボードやクロスを、そのまま通路側にも流用してしまうミスです。また、火気使用室と無窓居室は、居室であっても準不燃材料以上が求められます。「居室だから難燃で足りる」と一括で判断せず、部屋ごとに求められる区分を図面へ書き込んで確認すると、手戻りを防げます。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

木目調のデザインにしたい場合も認定のない木材を張ってはいけない

木目のぬくもりを取り入れたい場合も、対象部分に認定のない木材を張ることはできません。デザインと両立させるには、次のような方法があります。

  • 認定品の木質材:認定を受けた木質パネルを使う
  • 木目調の不燃化粧板:見た目は木目、性能は不燃である
  • 対象外部分の活用:腰壁など対象外に無垢材を使う

特に対象外部分の活用は、内装制限を守りながら木の質感を出せる方法です。ただし、腰壁として使える高さは床から1.2mまでで、天井には除外がありません。木質の天井やルーバーを計画する場合は、認定品を選ぶか、設計者や確認検査機関へ事前に相談してください(※2)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

防火区画とは?間仕切り工事でやってはいけないこと

防火区画の仕組みと種類、間仕切り工事やレイアウトで避けるべき行為を解説します。

防火区画とは、火災の延焼を防ぐために建物を一定範囲ごとに区切る仕組み

防火区画とは、耐火性能をもつ床・壁と防火設備で建物内を区切り、火災による炎や煙の拡大を一定の範囲にとどめる仕組みです。建築基準法施行令第112条に定められ、建物の構造や規模に応じて設置が求められます(※2)。

区画の開口部には、加熱開始後1時間、火炎を出さない特定防火設備や、同20分間の防火設備が設けられます。防火区画は「燃える範囲を区切る」規制で、内装材の燃えにくさを定める内装制限とは、互いに補い合う関係にあります(※2)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

防火区画をわかりやすく解説|面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画の違い

防火区画は、目的に応じて次の4種類に分かれます(※2)。

  • 面積区画:一定面積ごとに水平に区切る
  • 高層区画:11階以上を小さな面積で区切る
  • 竪穴区画:階段や吹抜けなど縦の空間を区切る
  • 異種用途区画:用途が異なる部分どうしを区切る

面積区画は、主要構造部を耐火構造とした建築物などの場合、1,500㎡以内ごとに区画します。高層区画は11階以上が対象で、原則100㎡以内ごとですが、壁・天井の仕上げと下地を準不燃材料にすると200㎡、不燃材料にすると500㎡まで区画面積を広げられます。竪穴区画は、階段やエレベーターの昇降路、ダクトスペースなどと、その他の部分を区切るものです。異種用途区画は、建築基準法第27条で耐火性能が求められる特殊建築物の用途部分と、事務所などその他の部分を区切るものです。

高層区画では、内装を不燃化すると区画面積が広がるため、レイアウトの自由度が高まる場合があります。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

防火区画の壁を撤去・改変するパーテーション工事はNG

レイアウト変更で壁を撤去したり、新しく開口を設けたりする際に、その壁が防火区画を構成していると、法令違反になります。防火区画の壁は、床から上階の床の下まで途切れなく達している必要があり、見た目は普通の間仕切壁でも、区画の一部であることがあります。オフィス工事で起こりやすいNG例は次のとおりです。

  • 区画壁の撤去:区画を構成する壁を取り壊す
  • 開口の新設:区画壁に出入口や窓を新設する
  • 天井裏の隙間:壁の上部に隙間を残す

ガラスパーテーションに置き換えて区画を失う、といったケースも同様です。壁を動かす前に、ビル側から防火区画の位置が分かる図面を受け取り、対象かどうかを管理会社や設計者へ確認してください。

防火戸・防火シャッターの作動を妨げるレイアウトはNG

防火戸や防火シャッターは、火災時に閉鎖して区画を成立させる設備です。作動を妨げるレイアウトは、区画そのものを機能させなくします。次のような配置は避けてください。

  • シャッターの降下範囲:什器や書棚を置かない
  • 防火戸の前:荷物や什器を置かない
  • 防火戸の固定:くさび等で開放状態にしない

防火シャッターの降下範囲は、床面の表示ラインなどで示されている場合があります。レイアウト図を作る段階で、防火設備の位置と可動範囲を書き込んでおくと、什器の配置ミスを防げます。

防火区画貫通処理とは?配線・配管工事でやってはいけないこと

配線・配管が防火区画を通る際の処理ルールと、避けるべき施工を解説します。

防火区画を配線・配管が貫通する場合は防火区画貫通処理が必要

給水管や配電管、ケーブル、空調の冷媒管などが防火区画の壁や床を貫通する場合は、貫通部から火炎や煙が抜けないよう、防火措置を施す必要があります。これが防火区画貫通処理です。建築基準法施行令第112条は、管と防火区画のすき間を、モルタルなどの不燃材料で埋めるよう定めています(※2)。

さらに、管の材質や外径にも基準があり、施行令第129条の2の4により、次のいずれかを満たす必要があります(※6)。

  • 不燃材料の管:貫通部の両側1m以内を不燃材料とする
  • 外径の基準:国が定める数値未満とする
  • 大臣認定工法:認定を受けた工法を用いる

電源や通信ケーブルの増設、空調機の増設に伴う冷媒管の配管などで、区画壁や区画床を通す場合が該当します。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
※6「防火区画を貫通する管の構造に関する告示化の検討|国土交通省」 https://www.mlit.go.jp/common/001351092.pdf

貫通部の穴を埋め戻さずに放置してはいけない

使わなくなった配線や配管を撤去したあとの穴や、開口のまま残された貫通部は、火炎と煙の通り道になります。防火区画にあいた穴は、そのまま放置してはいけません。

とくに起こりやすいのが、レイアウト変更や設備更新のあとに、貫通部の処理が漏れるケースです。あとから追加した配線が、当初の貫通処理の対象外になっていることもあります。退去時の原状回復でも、防火区画の貫通部は元の状態へ復旧する必要があるため、工事写真や施工記録を残しておくと、ビル側への説明もスムーズです。

認定工法以外の材料で隙間を埋めるのはNG

貫通部のすき間は、不燃材料で埋めなければなりません。発泡ウレタンやシリコン系のコーキング材、テープ類など、不燃性が確認できない材料での充填は認められません(※2)。

また、管の種類によって求められる工法が異なります。鋼管のような不燃材料の管は、すき間をモルタルなどで埋める仕様が認められている一方、樹脂管やケーブル、複数の管をまとめて通す場合などは、国土交通大臣の認定を受けた耐火パテや熱膨張性の耐火材を、認定の範囲内で使う必要があります。管の種類、外径、区画の構造、耐火時間のいずれかが認定範囲から外れると、その工法は使えません。工事業者へ、認定番号と施工写真の提出を求めておくと安心です(※6)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
※6「防火区画を貫通する管の構造に関する告示化の検討|国土交通省」 https://www.mlit.go.jp/common/001351092.pdf

内装制限の緩和条件|スプリンクラー設置で制限が外れるケース

内装制限が緩和される条件と、緩和されても残る規制、注意点を解説します。

スプリンクラー等と排煙設備の設置で内装制限が緩和される

自動式のスプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備などと、施行令第126条の3に適合する排煙設備を設けた建築物の部分には、内装制限が適用されません(施行令第128条の5第7項、令和2年国土交通省告示第251号)。このほか、スプリンクラー設備等を設けたうえで天井を準不燃材料で仕上げた部分なども適用除外になりますが、無窓居室や火気使用室などは除かれるため、スプリンクラーがあるだけで制限が外れるわけではありません(※2)(※7)。

2020年4月の施行令改正では、床面積、天井高、消火設備や排煙設備の状況などに応じて、国土交通大臣が定める条件を満たす部分を適用除外とする仕組みも加わりました。たとえば、間仕切壁や防火設備で区画された床面積100㎡以内の居室で、天井の高さが3m以上のものが条件の一例です。ただし条件は複数あり、劇場や病院、無窓居室、火気使用室などは対象外となるため、実際の適用には確認が必要です(※7)。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
※7「令和2年国土交通省告示第251号(内装制限の適用除外となる建築物の部分を定める件)|国土交通省」 https://www.mlit.go.jp/common/001339925.pdf

内装制限が緩和されても防火区画の規制はなくならない

内装制限の緩和は、あくまで壁・天井の仕上げ材に関する特例です。防火区画の設置や、区画の開口部に設ける防火設備、貫通部の処理といった規定は、緩和後も同じように適用されます。

むしろ、緩和の前提として区画が求められる場合があります。たとえば大規模建築物の事務所の居室では、耐火建築物などの高さ31m以下の部分で、床面積100㎡以内ごとに準耐火構造の壁・床や防火設備で区画された居室が、内装制限の適用から除かれます(※2)。この場合、区画壁を撤去したり開口を設けたりすると、緩和の前提が崩れ、内装材の変更が必要になるおそれがあります。緩和を利用しているオフィスでは、間仕切り工事の前に、緩和の根拠を設計者やビル管理会社へ確認してください。
※2「建築基準法施行令|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338

緩和条件を満たしているか確認せずに可燃材を使ってはいけない

緩和は、部分ごとに、定められた条件をすべて満たして初めて使えます。ビル全体が緩和されていると思い込み、可燃材を使うのは危険です。確認したいのは、次の3点です。

  • 対象範囲:緩和を受ける部分の位置と面積である
  • 適用条件:設備・区画・天井高の条件を満たす
  • 確認先:ビルの設計者や確認検査機関である

また、内装制限が適用除外になっても、消防法の防炎規制は別に適用されます。緩和の有無は、確認済証や設計図書で確認し、不明な場合は建築主事や指定確認検査機関へ相談してください。誤って可燃材を使うと、是正や工事のやり直しになり、費用と工期に影響します。

防炎カーテンの義務|オフィスで防炎物品が必要になるケース

消防法の防炎規制が適用されるオフィスの条件と、対象となる物品を解説します。

高さ31mを超えるオフィスビルではカーテンやじゅうたんに防炎物品の使用が義務

消防法第8条の3により、高さ31mを超える高層建築物(おおむね11階以上)では、用途を問わず、カーテンやじゅうたんなどの防炎対象物品を使う場合、一定の防炎性能をもつ防炎物品でなければなりません。事務所ビルも例外ではなく、入居フロアが低層階でも、ビルが高層建築物であれば対象になります(※3)(※8)。

31m以下のビルでも、防炎物品が必要になる場合があります。地下の工作物内に設けられ、連続して地下道に面する地下街では、事務所であっても対象です。また、飲食店や物販店を含む複合用途のビルでは、その飲食店や物販店の部分が対象になります(※3)。
※3「防炎防火対象物|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouen/p03.html
※8「よくある質問とその答え|日本防炎協会」 https://www.jfra.or.jp/faq/

防炎ラベルのないカーテン・布製ブラインドを使ってはいけない

防炎物品かどうかは見た目では判断できないため、防炎性能を示す防炎ラベルの有無で確認します。ラベルのないカーテンやブラインドは、防炎物品として使えません。購入や引き継ぎの際は、次の点を確認しましょう。

  • ラベルの有無:製品に防炎ラベルが付いているか
  • 前テナントの残置物:ラベルのない物を流用しない
  • 防炎製品との違い:任意認定の製品は義務の対象外である

オンラインで購入する場合も、商品説明に「防炎物品ラベル付き」と明記されているかを確認してください。入居時に前のテナントのカーテンやブラインドを引き継ぐ場合は、ラベルが残っているかを必ず点検します(※8)。
※8「よくある質問とその答え|日本防炎協会」 https://www.jfra.or.jp/faq/

防炎物品の義務対象になるオフィス内の物品一覧

対象となる主な物品は、次のとおりです(※9)。

  • カーテン:窓や出入口の目隠しの幕である
  • 布製ブラインド:ロールスクリーン等の布製品である
  • 暗幕:光を遮る幕である
  • じゅうたん等:カーペットや人工芝などである
  • 間仕切り用の布:間仕切りに使う布製のカーテンなど

このほか、展示用合板や工事用シートも対象です。一方、木製・プラスチック製のブラインドや、おおむね2㎡以下のじゅうたん、床に接着された合成樹脂製床シートは、対象外として扱われます(※10)。会議室、受付、役員室など、カーテンやカーペットの多い場所は、ラベルの確認を優先してください。
※9「防炎対象物品|東京消防庁」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/bouen/p02.html
※10「防炎防火対象物、防炎物品|堺市消防局」 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/setubikijun.files/06.04-bouen.pdf

内装制限・防火区画に違反した場合のリスク

違反時に想定される行政処分や責任、工事前に守るべき手続きを解説します。

是正命令や使用停止などの行政処分を受けるおそれがある

建築基準法に違反した建築物には、特定行政庁が、工事の施工停止、使用禁止・使用制限、是正のための改修などを命じることができます(第9条第1項)。命令の相手は、建築主や工事の請負人だけでなく、建物の所有者、管理者、占有者にも及ぶため、入居したテナントが対象になる可能性もあります(※1)。

命令に違反すると、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です(第98条第1項)。2025年6月1日の刑法改正で、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。内装制限(第35条の2)に違反した場合は、設計者(設計図書どおりに施工しなかった場合は工事施工者)が同じ罰則を受け、建築主の故意による違反では建築主も罰せられます(※1)。防炎規制の違反は、消防署から是正を求められます。
※1「建築基準法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201

火災で被害が拡大した場合、管理責任や損害賠償を問われるおそれがある

内装や防火区画の不備は、火災が起きたときに延焼や煙の拡大を招き、被害を大きくします。その結果、被害を受けた他のテナントやビルオーナーから、損害賠償を請求される可能性があります。

建物などの工作物に瑕疵があって他人に損害を与えた場合、まず占有者が、必要な注意をしていたと示せない限り賠償責任を負い、それができなければ所有者が責任を負います(民法第717条)(※11)。また、賃貸借契約上の用法遵守義務や、定められた工事手続きを守る義務に違反すれば、契約上の責任を問われることもあります。個別の責任の有無は事案ごとに判断されるため、詳細は弁護士など専門家へ確認してください。
※11「民法|e-Gov法令検索」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

ビルオーナー・管理会社の承認を得ずに内装工事を進めてはいけない

賃貸オフィスの内装工事は、ビルの規定に沿った承認手続きが前提です。多くのビルでは、工事をビル側が施工するもの、借主が指定業者へ発注するもの、借主が自由に発注できるものといった区分に分け、図面や仕様書の提出と承認を求めています。承認を得ずに進めると、次のような問題が起こります。

  • 是正工事:不適合部分の撤去と再施工が必要である
  • 契約違反:賃貸借契約の違反として扱われる
  • 工期の遅延:入居や営業開始の時期が遅れる

また、スプリンクラーや自動火災報知設備の移設を伴う工事では、消防署への届出が必要になる場合があります。内装制限や防火区画は専有部の外にも影響するため、レイアウトと仕様を固める前に、ビル側の窓口と設計者を交えて確認しましょう。

まとめ:オフィスの内装制限は「使ってはいけない素材」と「壊してはいけない区画」を押さえる

オフィスの内装制限で押さえるべきは、壁・天井に「使ってはいけない素材」と、間仕切りや配線工事で「壊してはいけない区画」の2点です。対象になるかどうかは、ビル全体の規模や部屋の条件で決まり、防炎物品や防火区画の規定も並行して確認する必要があります。工事の直前になって計画を見直すと、費用も工期もかさみます。ただ、これらを移転前にすべて把握するのは容易ではありません。東京オフィスチェックは、物件のご紹介だけでなく、内装制限を考慮したレイアウト図の作成まで対応しており、法令に適合した内装計画をご提案できます。オフィス移転や内装計画でお悩みの際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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