【2026年最新】築地再開発とは?9棟の施設とカジノ・競馬場の噂の真相を解説

【2026年最新】築地再開発とは?9棟の施設とカジノ・競馬場の噂の真相を解説

「都心最後の一等地」と呼ばれる築地市場の跡地が、豊洲移転から8年を経て、いよいよ新しい街へと生まれ変わろうとしています。オフィス移転を検討する企業にとっても見逃せない動きですが、ネット上にはさまざまな情報が飛び交い、何が確定した計画で何が憶測なのか判断に迷う方も多いでしょう。本記事では、東京都や事業者が公表している資料をもとに計画の現在地を整理し、築地・銀座周辺に拠点を構える際の実務に役立つ判断材料をお伝えします。あわせて、周辺で先行する再開発の動きにも触れながら、いつ頃どのような移転先の選択肢が生まれるのかを見通します。中長期の移転計画を立てる際の参考に、ぜひ最後までご覧ください。

築地再開発で新たに整備される予定の施設は?9棟の全体像を解説

築地再開発では、旧築地市場跡地に用途の異なる9棟の建物と広場・緑地が一体的に整備されます。ここでは各施設が担う役割を機能ごとに整理します。

約5万人収容のマルチスタジアムを中心とする大規模集客・交流施設

築地再開発の核となるのが、約5万人を収容できる屋内全天候型のマルチスタジアムです。基本計画では「大規模集客・交流施設」と位置づけられ、延床面積は約17.9万㎡、高さは約40〜110mとされています(※1)。天候に左右されずに大規模イベントを開催できるうえ、客席やステージの配置を変えられる可変性・多機能性を備える点が特徴で、スポーツだけでなくコンサートや文化・芸術イベントなど幅広い用途が想定されています。
スタジアムには店舗も併設される計画です。9棟のなかでもスタジアムは、建物単体で国内外から大量の来街者を呼び込む「集客装置」としての役割を担っており、周辺の飲食・物販や宿泊需要を押し上げる起点になると考えられます。一方で、イベント開催日には数万人規模の人の流れが生まれるため、後述するモビリティハブや歩行者ネットワークとの一体整備が前提となっています。
※1「『築地地区まちづくり事業 基本計画』を策定|三井不動産株式会社」(2025年8月22日) https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2025/0822/

MICE・ホテル・レジデンス棟とホテル棟2棟が担う迎賓機能

国際都市としての「迎賓・ホスピタリティ」機能を担うのが、MICE・ホテル・レジデンス棟と2棟のホテル棟です。MICE・ホテル・レジデンス棟は延床面積約14.6万㎡、高さ約210mで、大型ホールや会議室などの国際水準のMICE施設に、ホテルと住宅を組み合わせた複合棟となります。2棟のホテル棟は合計延床面積約5.7万㎡、高さ約150mで、ホテルと店舗で構成される計画です(※1)。
国際会議や展示会の主催者にとっては、会場・宿泊・会食の場が徒歩圏で完結することが開催地を選ぶ重要な条件です。築地ではスタジアムとMICE施設、複数のホテルが同一エリアに集約されるため、大型の国際会議やインセンティブ旅行の受け皿となることが期待されます。また、住宅と店舗で構成されるレジデンス棟(延床面積約9.0万㎡・高さ約180m)も整備され、短期滞在から長期居住まで多様な滞在ニーズに対応する構成です(※1)。

オフィス棟・オフィス&レジデンス棟・ライフサイエンス複合棟の役割

ビジネス拠点としての機能を担うのが、オフィス棟、オフィス・レジデンス棟、ライフサイエンス・商業複合棟の3棟です。それぞれの規模は以下のとおりです(※1)。

  • オフィス棟:延床約23.1万㎡・高さ約210m
  • オフィス・レジデンス棟:延床約12.6万㎡・高さ約190m
  • ライフサイエンス・商業複合棟:延床約40万㎡・高さ約190m

なかでも注目すべきは、9棟中最大の延床面積を持つライフサイエンス・商業複合棟です。ラボ&オフィスやインキュベーション施設、店舗が入る計画で、計画地に隣接する医療施設などと連携し、専門的な知見を持つ人材や情報が集まるイノベーション・プラットフォームの構築を目指しています(※1)。一般的なオフィスビルとは異なり、実験設備を備えた研究開発拠点を都心に確保できる点は、製薬・医療機器・ヘルスケア系企業にとって大きな意味を持ちます。
一方、オフィス棟とオフィス・レジデンス棟は、銀座から続く文化・商業の集積や、新橋・汐留のビジネス拠点と連続するワークプレイスとして位置づけられています。オフィス・レジデンス棟は住宅を併設しており、職住近接型の働き方にも対応する構成です。

舟運・シアターホール複合棟と水辺を生かした「ONE PARK」構想

隅田川沿いに配置される舟運・シアターホール複合棟は、延床面積約3.2万㎡、高さ約50mと9棟のなかで最も低層の建物です。ホールのほか、フードホールなどの店舗やフードラボが入る計画で(※1)、事業予定者選定時の提案では約1,200人規模のシアターホールが示されていました(※2)。築地場外市場と連携して日本の食文化を体験・発信する役割も担い、水上から訪れる人を迎える「水辺の玄関口」となる施設です。
この建物を含む水辺一帯で展開されるのが「ONE PARK」構想です。隅田川や浜離宮恩賜庭園と一体的に緑地・広場を整備し、河川区域を含めて合計約10haのオープンスペース・水辺空間を生み出す計画です(※3)。建物群は、かつての築地市場の扇形の建屋に由来する「扇」をデザインモチーフとしており、水上から見たときに東京の新たなアイコンとなる景観の形成が意識されています。オフィスワーカーにとっても、昼休みや就業後に水辺や緑地を日常的に利用できる環境は、都心の他エリアにはない魅力といえるでしょう。
※2「築地市場跡地に5万人スタジアム建設へ、三井不動産・鹿島・トヨタなど連合|日経クロステック」 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00421/
※3「築地まちづくり公式ウェブサイト|築地まちづくり株式会社」 https://tsukiji-machizukuri.jp/

築地再開発はいつ完成する?事業者・敷地面積と開業スケジュール

築地再開発の事業スキームと規模、今後のスケジュールを公式資料にもとづいて整理します。隣接地区で先行する再開発の工程もあわせて確認しましょう。

事業者は三井不動産ら3社が設立した「築地まちづくり株式会社」

築地再開発を担うのは、三井不動産を代表企業とし、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社の3社を中心に2024年12月に設立された「築地まちづくり株式会社」です。同社は本事業のために設立された特別目的会社(SPC)で、上記3社が開発・運営の責任を負う事業会社として参画しています(※1)。
事業者グループ「ONE PARK×ONE TOWN」は計11社で構成され、建設は鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店の4社、設計は日建設計とパシフィックコンサルタンツ、協力企業として朝日新聞社とトヨタ自動車が名を連ねています。東京都による公募型プロポーザルには2グループが応募し、審査を経て2024年4月に同グループが事業予定者に決定しました(※4)。
事業手法は、都が土地を所有したまま民間に貸し付ける一般定期借地方式です。貸付期間は「70年間(舟運利便施設等の運用開始から)+建設期間等」とされ、事業者は期間中に施設の設計・建設・運営・維持管理を担い、都に貸付料を支払います(※4)。都有地を売却せず長期で活用する仕組みであるため、都・事業者・外部有識者で構成するマネジメント会議が計画のブラッシュアップを継続的に検討している点も特徴です。
※4「築地地区のまちづくりについて(ファクトシート・よくある質問)|東京都都市整備局」(2026年5月更新) https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/factsheet-jp20260529-pdf

活用都有地面積19万㎡・総延床面積126万㎡・総事業費9,000億円の規模

活用される都有地は約19万㎡(194,679.11㎡)で、東京ドーム約4個分に相当します。ここに建てられる建物の総延床面積は約126万㎡、総事業費は約9,000億円に上ります(※1)(※4)。
総延床面積は、事業予定者の選定時に示された約117万㎡から、2025年8月の基本計画で約126万㎡へと拡大しました。選定時点でも、麻布台ヒルズや高輪ゲートウェイシティを上回る都内最大規模の再開発になると報じられており(※2)、計画の更新によってその規模感はさらに増しています。
また、築地再開発では建物を建てる前段の作業にも大きなコストがかかります。跡地の地下には旧市場のコンクリート構造物や基礎杭が残っており、その撤去や土壌汚染対策、埋蔵文化財の本掘調査に必要な概算費用は約1,450億円(2025年9月時点)と試算されています。なお、この費用は覚書にもとづき、土地を引き渡した側である都の市場会計が負担することとされています(※4)。

開業時期は2030年代前半以降、段階的な整備が予定される

三井不動産などの発表では、築地再開発の開業時期は「2030年代前半以降」とされています(※1)。東京都のファクトシートでも、基本計画にもとづく今後のスケジュールとして2030年代前半に「まちびらき一期」を迎える見通しが示されており(※4)、全9棟が一斉に完成するのではなく、段階的にまちが開かれていく計画です。主な節目は以下のとおりです。

<築地再開発の主なスケジュール>

  • 2025年3月:都と事業者が基本協定を締結
  • 2025年8月:事業者が基本計画を策定・公表
  • 2029年度:舟運・シアターホール複合棟の開業予定
  • 2030年代前半:まちびらき一期の予定
  • 2030年代後半:まちびらき二期(オフィス棟)の予定

スケジュールを左右する要素として押さえておきたいのが、現在も続く埋蔵文化財の調査です。2025年7月に始まった本掘調査では、明治期の海軍遺構とみられる製鋼炉の底部が出土し、有識者から移設保存が必要との意見が示されています(※4)。2026年7月には発掘調査現場見学会が開かれ、約4,000人が来場しました(※5)。環境影響評価の手続きも今後「評価書案」の段階へ進む予定であり、こうした調整の進み具合によって本体工事の着手時期が変わる可能性がある点には留意が必要です。
※5「築地まちづくり|東京都都市整備局」 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/machizukuri/machi_project/toshi_saisei/saisei08

隣接する築地二丁目地区第一種市街地再開発事業のスケジュール

築地市場跡地とは別に、東京メトロ日比谷線「築地」駅に隣接する約0.6haの区域では、日鉄興和不動産とNTT都市開発が施行する「築地二丁目地区第一種市街地再開発事業」が進んでいます。本事業は2024年7月に東京都から個人施行の認可を受け(※6)、既存建物の解体を経て、2026年7月29日付で権利変換計画の認可を取得しました。同日には国土交通大臣から民間都市再生事業計画の認定も受けています(※7)。
施行認可時点の予定では2026年度着工・2029年度竣工とされていましたが(※6)、権利変換計画認可時の発表では着工が2027年2月、竣工が2030年11月へと見直されています(※7)。築地市場跡地のまちびらき一期が2030年代前半とされていることを踏まえると、両事業の完成時期は近接しており、築地エリアでは2030年代初頭に新しい都市機能が相次いで立ち上がる構図になります。建物の規模やオフィス市場における位置づけは、後述の「築地二丁目地区の駅直結オフィスビル(地上20階)が先行供給される意味」で詳しく解説します。
※6「築地二丁目地区第一種市街地再開発事業 施行認可のお知らせ|NTT都市開発株式会社」 https://www.nttud.co.jp/news/detail/id/n26770.html
※7「『築地』駅直結のビル開発が本格始動 『築地二丁目地区第一種市街地再開発事業』権利変換が認可|週刊不動産経営」(2026年8月3日) https://www.biru-mall.com/attention/2026080311_01/

築地再開発にカジノや競馬場ができるという噂は本当か

築地再開発をめぐっては、カジノや競馬場ができるという噂が根強く流れています。噂が生まれた背景と、公式資料にもとづく検証方法を解説します。

カジノ(IR)誘致の噂はどこから生まれたのか

築地にカジノができるという噂が広がったのは、豊洲市場への移転が決まり、跡地の活用方針が固まりつつあった2018年から2019年ごろです。都が跡地に国際会議場や展示場、ホテルなどを核とした再開発を検討していると報じられると、一部の夕刊紙などがその施設構成をカジノを含む統合型リゾート(IR)と重ね合わせ、「築地カジノ構想」として取り上げました(※8)。当時、国が自治体に行ったIR誘致の意向調査に対して東京都が「申請を検討中」と回答していたことや、知事がIR誘致の是非を明言していなかったことも、臆測を後押ししたと考えられます。
しかし、都は2019年の時点で、築地のまちづくりにおいて「カジノは想定していない」との立場を明らかにしています(※9)。2019年3月に策定された「築地まちづくり方針」、事業者募集要項、2025年8月の基本計画のいずれにも、カジノやIRに関する記載はありません。さらに、2021〜2022年の国のIR区域整備計画の申請期間に東京都は申請しておらず、認定されたのは大阪の1か所のみです。国は2026年3月の政令改正で2027年5月6日〜11月5日を新たな申請期間としましたが、東京都は「総合的に検討」との姿勢にとどまっており、築地を候補地とする公式の動きは確認できません。
※8「築地市場跡地に国際会議場建設へ ついに始動『カジノ誘致』への一手|東京スポーツ」 https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/117930
※9「築地再開発は五輪後に加速 閉場1年、交通整備も|日本経済新聞」(2019年10月) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50661290V01C19A0EA5000/

競馬場に関する噂に事実の裏付けはあるのか

競馬場ができるという噂については、裏付けとなる公式情報は確認できません。東京都のファクトシートや事業者の基本計画に示されている9棟の用途は、スタジアム、ライフサイエンス・商業、MICE・ホテル・住宅、オフィス、ホール・店舗などであり、競馬場やそれに類する施設は含まれていません(※1)(※4)。
噂の発生源は特定できませんが、「約5万人を収容する大規模スタジアム」という計画と、過去のカジノ誘致の報道が混ざり合い、「ギャンブル関連の施設ができるのではないか」という連想が広がった可能性が考えられます。そもそも競馬の開催は競馬法にもとづき、日本中央競馬会や都道府県などの主催者に限られており、都内の地方競馬はすでに品川区の大井競馬場で行われています。約19万㎡の敷地に9棟を配置する現在の計画に、コースやスタンドを備えた競馬場が入り込む余地はなく、事実とは異なる情報と判断してよいでしょう。

基本計画に記載された正式な施設用途で噂を検証する方法

築地再開発については今後も真偽不明の情報が出回る可能性があるため、判断の拠り所となる一次情報を押さえておくことが大切です。確認すべき主な情報源は次のとおりです。

  • 基本計画:9棟の用途と規模を確認できる
  • 都のファクトシート:Q&A形式で最新状況を示す
  • 公式ウェブサイト:現場の状況を随時更新している
  • 環境影響評価書案:施設計画の詳細が示される

これらの資料に記載されている施設用途が、現時点で正式に計画されている内容です。たとえば、読売新聞グループ本社が事業者に加わっていることから、スタジアムがプロ野球球団の本拠地になるのではないかという報道も見られますが(※10)、基本計画上の位置づけはあくまで多目的のマルチスタジアムです。報道や口コミで気になる情報を目にした際は、基本計画の配棟計画と照らし合わせ、該当する施設用途が記載されているかを確認するのが確実な方法です。なお、基本計画は今後の詳細検討や行政協議によって変更される可能性があるため、東京都や事業者の最新の発表を定期的に確認するようにしましょう。
※10「築地市場跡地の再開発、三井不・読売連合が5万人スタジアム計画|健美家」 https://www.kenbiya.com/ar/ns/region/tokyo/7905.html

築地再開発が中央区のオフィス市場に与える影響とは

築地再開発と周辺で進む再開発は、中央区のオフィス需給にどのような変化をもたらすのでしょうか。新規供給の規模と周辺エリアへの波及を解説します。

オフィス棟・オフィス複合棟がもたらす中央区の新規供給インパクト

中央区のオフィス市場は現在、需給が引き締まった状態にあります。三鬼商事の調査によると、2026年8月時点の中央区の平均空室率は2.77%、平均賃料は坪当たり22,168円です。1年前の2025年8月(空室率3.85%、賃料19,352円)と比べると、空室率は1ポイント以上低下し、賃料は約14.6%上昇しています(※11)。
こうしたなかで築地再開発は、オフィス棟とオフィス・レジデンス棟を合わせて延床面積約35.7万㎡の建物を生み出します(※1)。住宅や店舗を含む面積のためすべてがオフィスになるわけではありませんが、ラボ&オフィスを備えたライフサイエンス・商業複合棟も加えると、中央区でも有数の規模のワークプレイスが一つの地区に誕生することになります。
ただし、基本計画では、オフィス・レジデンス棟などが2030年代前半の「まちびらき一期」、最大のオフィス棟(延床約23.1万㎡)は2030年代後半の「まちびらき二期」に開業する予定であり、足元の賃料水準に直接影響するわけではありません。むしろ注目すべきは、築地が日本橋・八重洲・京橋に続く中央区の新たなオフィス拠点として認知されることで、エリアの評価そのものが変わる点です。また、大型の新築ビルが竣工すると多くの区画が同時に市場へ出るため、一時的に空室率が上昇し、既存ビルでも条件交渉の余地が生まれやすくなります。中長期で移転を検討する企業は、こうした供給のタイミングを把握しておくことが重要です。
※11「東京の賃貸オフィスの賃料相場・空室率|三鬼商事株式会社」(2026年8月時点) https://www.e-miki.com/rent/tokyo.html

築地二丁目地区の駅直結オフィスビル(地上20階)が先行供給される意味

築地市場跡地の大規模オフィスに先立ち、2030年11月に竣工予定の築地二丁目地区の再開発ビルは、築地エリアで先行して供給される大型の新築オフィスとなります。施行認可時点では地上21階・地下3階、高さ約110m、延床面積約57,300㎡の計画でしたが(※6)、権利変換計画認可時の発表では地上20階・地下2階、延床面積約56,300㎡に見直されています(※7)。
オフィスフロアは基準階面積約590坪の無柱空間となる予定で、東京メトロ日比谷線「築地」駅と直結し、地下鉄出入口や駅前広場も整備されます(※7)。中小規模の既存ビルが多い築地周辺に、ワンフロア500坪を超える駅直結の新築オフィスが加わることで、本社機能の集約や大規模な拠点移転の受け皿が生まれることになります。
また、施行者は本事業を築地エリアにおける先行開発プロジェクトと位置づけています(※7)。このビルのテナント募集の状況や成約賃料は、その後に続く築地市場跡地のオフィス棟の賃料設定を占う試金石となるでしょう。2030年前後の移転を検討している企業にとっては、竣工前から始まる先行テナント募集の動きを早めに把握しておくことが、好条件の区画を確保するうえで有効です。

銀座・八丁堀・新富エリアなど周辺オフィス市場への波及効果

築地再開発の効果は計画地の中だけにとどまらず、銀座・八丁堀・新富エリアなど周辺のオフィス市場にも波及すると考えられます。築地駅と東銀座駅・新富町駅の中間に位置する旧電通本社ビル跡地などでは、高さ約180m・延床面積約16万㎡のオフィス棟を含む「築地一丁目地区」の再開発が計画されており(※12)、2027年度着工・2032年度竣工を目指しています(※13)。周辺エリアへの主な影響としては、次の3点が挙げられます。

  • 銀座・東銀座:来街者増で店舗併設ビルの需要が高まる
  • 八丁堀・新富:割安な既存ビルの受け皿需要が増える
  • 中央区全体:大型竣工に伴う二次空室が生じる

東京オフィスチェックのデータでは、2026年4月1日時点の中央区の平均坪単価は24,208円です(※14)。新築の大型ビルはこれを上回る賃料設定になることが一般的なため、コストを抑えたい中小企業にとっては、八丁堀や新富町など築地に隣接するエリアの既存ビルが現実的な選択肢となります。これらのエリアは、再開発で整備される歩行者ネットワークや将来の新駅の恩恵を受けながら、比較的抑えた賃料で拠点を構えられる可能性があります。また、大企業が新築ビルへ移転した後の既存ビルに生じる「二次空室」は、好立地の物件を確保するチャンスにもなるため、周辺エリアの募集動向を継続的にチェックしておきましょう。
※12「都市再生特別地区(築地一丁目地区)都市計画(素案)の概要|内閣府 地方創生推進事務局」 https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai32/siryou1.pdf
※13「2街区総延べ19万平米/27年度着工、竣工は32年度/築地一丁目地区再開発準備組合|建設通信新聞」 https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KV78C7SCJB1Y54YCGJ5NNN2X
※14 2026年4月1日時点で東京オフィスチェックに掲載中の物件から該当エリアの物件賃料をもとに算出(かつ1985年以降に竣工のビルのみ)

築地再開発エリアのアクセスは?交通・モビリティ計画を解説

 

築地再開発では、鉄道・道路・舟運・空のモビリティを組み合わせた交通基盤の整備が計画されています。アクセス面の将来像と防災機能を解説します。

地下鉄新駅と陸・海・空をつなぐモビリティハブ構想

現在の築地エリアは、都営大江戸線「築地市場」駅、東京メトロ日比谷線「築地」駅、都営浅草線・東京メトロ日比谷線「東銀座」駅などが徒歩圏にあります。ただし、旧築地市場跡地の中心部から既存駅まではやや距離があり、5万人規模のイベントに対応するには新たな鉄道アクセスが欠かせません。
そこで計画されているのが、東京駅と有明・東京ビッグサイトを結ぶ「都心部・臨海地域地下鉄」の新駅「新築地」(仮称)です。全長約6.1km・7駅の新線で(※15)、都は2040年までの実現を目指しており、本線や新駅出入口は築地地区の建築制限区域内での整備が想定されています(※4)。まちびらき一期が2030年代前半であることを考えると、開業当初は既存駅やバスが主なアクセス手段となり、新駅の開業によって利便性が一段と高まるという二段階の変化を見込んでおく必要があります。
基本計画では、この新駅を中心に陸・海・空のモビリティハブを形成する方針が示されています(※1)。地下鉄・バス・タクシーに加え、次世代モビリティ、舟運、空飛ぶクルマのポートやヘリポートまでを結ぶ広域交通結節点とし、にぎわいや情報発信の機能も組み込む計画です。高齢者や子ども、外国人など多様な利用者に配慮した乗り換え空間や、デジタル技術を活用したわかりやすい案内も導入される予定です(※3)。
※15「東京駅とビッグサイトを結ぶ『都心部・臨海地下鉄』実現へ|Impress Watch」(2022年11月25日) https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1458665.html

環状第2号線・舟運ネットワークが変える築地エリアの回遊性

道路面では、計画地を通る環状第2号線が交通の骨格となります。環状第2号線は2022年12月に築地〜新橋間の本線(地下トンネル)が開通して全線開通となり、新橋・虎ノ門方面から築地を経て勝どき・晴海・豊洲方面まで信号なしで走れるようになりました。今後は都市高速道路晴海線の延伸部についても2040年代前半の供用開始が目標とされており(※4)、臨海部との広域的な道路ネットワークがさらに強化される見込みです。
一方で、幹線道路はまちを分断する要因にもなります。そこで計画では、環状第2号線の両側を一体性・回遊性を高める歩行者デッキでつなぐほか、勝鬨橋から竹芝まで水辺を歩ける歩行者空間を都と連携して整備する方針が示されています(※4)。
水上交通では、勝鬨橋の下流側に都が整備する築地防災船着場を東京の舟運ネットワークの要として活用し、舟運の待合機能などを備えた施設も設けられます(※4)。都内の水辺拠点と舟運で結ばれることで、来街者の移動手段に新たな選択肢が加わるだけでなく、鉄道駅を起点としない回遊ルートが生まれる点も築地ならではの特徴です。

築地場外市場や浜離宮恩賜庭園と共存する防災機能の強化

築地再開発は、築地場外市場や浜離宮恩賜庭園といった周辺資源と共存しながら、エリア全体の防災力を高めることも重要なテーマとしています。基本計画では、東京都の「TOKYO強靭化プロジェクト」と連携し、陸・海・空のネットワークを活用した防災拠点を整備する方針が示されています(※3)。

  • 陸:環状第2号線と高速晴海線を活用する
  • 海:防災船着場で物資や人員を運ぶ
  • 空:ヘリポートや空飛ぶクルマポートを使う

鉄道や道路が不通になった場合でも、船着場やヘリポートを活用して災害支援を行える点は、内陸部の再開発にはない強みです。また、隅田川沿いではスーパー堤防事業と連携した高台まちづくりが進められ、水害リスクへの備えも強化されます(※3)。
周辺資源との共存という観点では、浜離宮恩賜庭園からの眺望への配慮や、築地場外市場と連携した食文化の継承が、基本計画で計画をブラッシュアップした項目として挙げられています(※4)。隣接する築地二丁目地区でも、平成通り側に災害時の一時待機場所となる大規模交流広場が整備される計画です(※7)。企業にとっては、BCP(事業継続計画)の観点から、こうした防災インフラが整ったエリアに拠点を構えることが、従業員の安全確保と事業継続の両面で評価材料になるでしょう。

まとめ:築地再開発の全体像を押さえてエリアの将来性を見極めよう

築地再開発は、約19万㎡の都有地に5万人規模のスタジアムやMICE施設、オフィス、ライフサイエンス拠点など9棟を整備する、総事業費約9,000億円の大規模プロジェクトです。まちびらき一期は2030年代前半とされ、隣接する築地二丁目地区でも2030年11月の竣工に向けて駅直結のオフィスビルの整備が進みます。カジノや競馬場の噂は公式資料では確認できないため、判断の際は基本計画などの一次情報にあたることが大切です。新駅は2040年までの実現が目標とされており、築地周辺は長期的に価値が高まっていくエリアといえます。将来の移転を見据え、供給のタイミングと周辺エリアの動向を継続的に把握しておきましょう。

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