オフィス賃料相場の正しい読み方と適正か判断する5つの視点
「オフィスの賃料は今、いくらが妥当なのか」——移転や契約更新を控えた企業の総務・経営企画担当者から、こうした声をよく耳にします。オフィス賃料相場は、2026年に入り東京都心5区を中心に上昇傾向が続いており、エリアやビルグレード、専有面積によって坪単価には大きな差があります。しかし、相場の数字を眺めるだけでは、自社が今払っている賃料が高いのか安いのか、貸主からの増額提示にどう対応すべきかまでは見えてきません。本記事では、最新の坪単価データをもとに相場の正しい読み方を整理したうえで、自社賃料の妥当性を見極める視点や、割高だった場合に取り得る選択肢までをわかりやすく解説します。
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オフィス賃料相場の坪単価目安はエリアによってこれだけ違う

オフィス賃料相場と一口にいっても、対象エリアやビル規模によって水準は大きく異なります。まずは東京都心5区の全体感と、区ごとの差を確認しましょう。
東京都心5区の坪単価は22,000円超・空室率2%台で推移している
三鬼商事「オフィスマーケットデータ」によると、東京都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の基準階面積100坪以上の主要貸事務所ビルの平均募集賃料は、2026年に入っても上昇が続き、直近では坪23,000円台に達しています(※1)。2023年から2024年初めにかけて坪19,700円台で底ばいとなった水準からは大きく回復しており、空室率も当時の6%台から直近では2%を下回る水準まで改善しました。近年の推移をまとめると、次のような流れになります。
- 2023年〜2024年初め:賃料が坪19,700円台で底打ち、空室率は6%台
- 2024年:2月から賃料が上昇に転じ、年末には空室率4%台へ低下
- 2025年〜2026年:賃料上昇が継続し、空室率は2%前後まで改善
空室率の低下は、貸主側が強気の賃料設定をしやすい市場環境になっていることを意味します。移転先を検討する際は、こうした需給の引き締まりを前提に、早めの情報収集を行うことが重要です。
都心5区でも渋谷区約26,000円・新宿区約20,000円と区によって6,000円超の開きがある
同じ都心5区の中でも、区ごとの坪単価差は小さくありません。渋谷区は道玄坂・神南など駅前の高グレードビルで坪30,000円台後半に達する物件もあり、平均水準でも区内では最も高い部類に入ります。一方、新宿区は坪16,000〜29,000円台と幅が広く、平均では坪20,000円前後に収まる物件が多い傾向です。平均値で比べても両区には約6,000円、ハイグレード帯同士では1.5倍前後の開きが生じるケースもあります(※2)。「都心5区」とひとくくりにせず、区単位・エリア単位で相場を確認する必要があります。
同一エリアでも20坪以下と100坪超では坪単価が数千円単位で変わる
坪単価は面積帯によっても変動します。小規模区画は管理コストの割合が相対的に高く割高になりやすい一方、大規模区画はハイグレードビルへの入居機会が増えるため、条件次第では小規模帯より高い坪単価になることもあります。実際、都心5区のデータでは、20坪未満の平均坪単価と200坪以上の平均坪単価との間に数千円の差が見られます(※2)。面積帯ごとに賃料が変わる主な理由は次のとおりです。
- 管理コスト:小規模区画ほど坪あたりの負担が重い
- ビルグレード:大規模区画は高グレードビルに偏りやすい
- 仲介の集約:大口成約は交渉余地が生まれやすい
自社の希望面積帯によって参照すべき相場が異なる点は、見落としやすいポイントです。坪数帯別の相場表を確認する際は、自社の想定面積に近い区分の数値を参照するようにしましょう。
オフィス賃料相場のデータを正しく読むために知っておくこと

相場データは便利な指標ですが、そのまま自社の判断に使うと誤解が生じることがあります。読み解く際の前提を整理します。
相場表に掲載される募集賃料は成約賃料より数%〜10%高い場合もある
一般に公開されているオフィス賃料相場の多くは、貸主や仲介会社が募集時に提示する「募集賃料」を集計したものです。実際に契約が成立する「成約賃料」は、交渉や市況によって募集賃料より低くなることがあり、その差は数%から1割程度に及ぶ場合もあります。ただし、人気エリアや空室率の低い物件では、募集条件に近い水準で成約することも珍しくありません。相場表の数字を「そのまま自社が払うべき賃料」と捉えず、あくまで交渉前の目安として扱う姿勢が求められます。
共益費・フリーレントを含む実質賃料で比較しないと数千円単位の誤差が生じる
表面上の坪単価が同じでも、共益費が賃料に含まれているか別建てかによって、実際の月額負担は変わります。またフリーレント(一定期間の賃料免除)がある物件では、契約期間全体でならした実質的な負担はさらに下がります。相場データ同士、あるいは相場データと自社賃料を比較する際は、共益費込みかどうか、フリーレント条件が反映されているかを必ず確認し、実質賃料ベースで揃えることが欠かせません。
相場データは集計条件が異なるため出典と対象範囲を揃えて比較する
相場データは提供元によって対象エリアの定義や集計対象ビルの規模が異なります。例えば「東京都心5区」といっても、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区を指す場合と、品川区や江東区を加えた7区で集計する場合があり、平均値も変わってきます。相場データを比較する際に確認しておきたい主な項目は次のとおりです。
- 対象エリア:都心5区か7区か等の範囲
- 対象ビル規模:大規模ビル限定か中小含むか
- 集計時点:月次か四半期かで更新頻度が異なる
- 共益費の扱い:込みか別かで数値が変わる
複数の相場情報を見比べる際は、まず出典と対象範囲の定義を確認し、条件を揃えたうえで数値を比較することが、誤った判断を避けるための基本になります。
同じエリア内でもオフィス賃料の相場が変わる5つの物件条件

エリアが同じでも、賃料は物件条件によって大きく変動します。ここでは坪単価に影響する代表的な5つの条件を整理します。
築年数とビルグレードで同一エリアの坪単価は数千円単位で変わる
築浅ビルやハイグレードビルは、設備の新しさやブランド力を背景に高めの賃料設定になりやすい傾向があります。反対に築年数が経過したビルは、同一エリア内でも坪単価が数千円低く設定されるケースが一般的です。近年は新築・高グレードビルへの移転需要がある一方、築古ビルとの二極化も進んでおり、同じ最寄り駅でもビルによって坪単価の幅が大きくなっている点に注意が必要です。
駅距離が徒歩1分と10分で坪単価に数千円の差が生まれることがある
最寄り駅からの距離も坪単価に直結する要素です。駅直結や徒歩1〜3分圏内の物件は需要が集中しやすく、坪単価が高止まりする傾向があります。一方、同じ路線・同じエリアでも徒歩10分前後まで範囲を広げると、坪単価が数千円下がる物件が見つかることも少なくありません。採用面や来客対応に支障がない範囲で駅距離の許容幅を広げることは、賃料を抑える現実的な選択肢のひとつです。
耐震性能・個別空調・OAフロアなどの設備水準が賃料を左右する
設備スペックも、賃料水準を左右する要素です。BCP(事業継続計画)への関心が高まる中、新耐震基準や免震・制震構造を備えたビルは、企業からの評価が高く賃料も相応の水準になりやすい傾向があります。賃料に影響しやすい代表的な設備条件は次のとおりです。
- 耐震性能:免震・制震構造は評価が高くなりやすい
- 空調方式:個別空調は残業時も稼働でき人気が高い
- OAフロア:配線の自由度が高く移転時の工事も省ける
- セキュリティ:入退室管理や警備体制の充実度
逆に、こうした設備が古い物件では賃料が抑えられている場合があり、自社にとって必須の設備条件を整理したうえで物件を絞り込むことが、無駄なコストを避ける近道になります。
専有面積の規模(区画の広さ)によっても坪単価が変わる
専有面積の規模によっても坪単価は変動します。小規模区画は管理コストの割合が相対的に高くなるため坪単価が上がりやすく、大規模区画はビルグレードによっては坪単価が上がる場合もあれば、スケールメリットで抑えられる場合もあります(※2)。自社の希望面積が小規模区画に該当するのか、大規模区画に該当するのかによって、参照すべき相場の水準が変わる点を踏まえておく必要があります。
新築グレードAビルと築30年超ビルの坪単価差は同一エリアで2倍を超えることもある
ここまで見てきた築年数・設備・駅距離といった条件が重なると、同一エリア内でも坪単価の差は大きく広がります。特に、新築のグレードAビルと築30年を超えるビルとを比べると、坪単価が2倍を超えて開くケースも見られます(※3)。相場表の平均値だけを見て「このエリアは高い/安い」と判断するのではなく、自社が検討している物件がどのグレード帯に位置するのかを踏まえて相場と照らし合わせることが重要です。
オフィス賃料相場と自社賃料を比べて割高かどうか判断する方法

相場データを把握したら、次は自社の賃料が妥当かどうかを判断する段階です。ここでは実務で使える5つの視点を紹介します。
隣接する区でも坪単価に5,000円超の差があるため比較は同一区・同等グレードで揃える
隣接する区であっても、坪単価には数千円単位の差が生じます。例えば渋谷区と新宿区は隣接していますが、平均坪単価には約6,000円の開きが見られます(※2)。自社賃料が高いか安いかを判断する際は、都心5区の平均値のような広いくくりではなく、同一区・同等グレードの物件同士で比較することが前提になります。
粗利に占める賃料割合10〜20%を目安に財務的な適正水準を確認する
財務面からの適正水準チェックとして、粗利(売上総利益)に占める賃料の割合を確認する方法があります。一般的に、オフィス賃料は粗利の10〜20%程度に収まることが望ましいとされます。業種や利益構造によって適正な割合は変わるため、あくまで1つの目安として捉える必要がありますが、次のように活用すると実務に落とし込みやすくなります。
- 現状把握:直近決算の粗利と年間賃料を照合する
- 業種比較:同業他社の一般的な水準を参考にする
- 将来試算:増員計画を踏まえた粗利予測とも照らす
この割合が大きく上回っている場合、坪単価の相場比較だけでなく、自社の収益構造から見ても賃料負担が重くなっている可能性があり、移転や交渉を検討する材料のひとつになります。
1人あたり3.8坪を目安に必要坪数を算出して坪単価で相場と照らす
必要な面積から賃料を試算する方法も有効です。ザイマックス不動産総合研究所の調査によると、東京23区の在籍者1人あたりオフィス面積は中央値で3.8坪(2025年)となっています(※4)。会議室や収納スペースの必要量、出社率によって適正値は変わりますが、この1人あたり3.8坪を目安に必要坪数を算出し、希望エリアの坪単価を掛け合わせることで、月額賃料の概算がつかめ、相場との照らし合わせがしやすくなります。
貸主からの賃料増額通知は市場全体の動向だけで判断しない
都心5区の賃料が上昇基調にあることを理由に、貸主から増額通知を受けるケースが増えています。ただし、市場全体が上昇しているからといって、自社物件の増額がそのまま妥当とは限りません。増額通知を受けた際に確認しておきたい観点は次のとおりです。
- 自社物件の条件:築年数やグレードが平均と同水準か
- 周辺の競争環境:近隣に新規供給がないか
- 契約書の改定条項:協議条項か自動改定条項か
自社が入居しているビルの築年数やグレード、周辺の競争環境が市場平均と同じ動きをしているかを確認したうえで、増額の妥当性を判断する必要があります。
複数拠点を持つ企業は拠点ごとの条件を分けて相場比較を行う
複数拠点を管理している企業では、拠点ごとに契約時期や物件条件が異なるため、全社一律の基準で「高い・安い」を判断すると実態を見誤ります。拠点ごとに整理しておきたい項目は次のとおりです。
- 所在エリア:区・最寄り駅・徒歩分数
- ビルグレード:築年数と設備水準
- 契約面積と坪単価:㎡表記の場合は坪換算で確認
- 契約条件:更新時期と賃料改定条項
それぞれ該当する相場と個別に照らし合わせることで、優先的に見直すべき拠点が明確になり、限られたリソースを効果的に配分できます。
相場より高いオフィス賃料を見直す際に取り得る3つの選択肢

自社賃料が相場より割高だと判断できた場合、取り得る選択肢は主に3つあります。状況に応じて使い分けることが大切です。
契約更新・増額通知のタイミングで賃料交渉に臨む
最も取り組みやすいのが、契約更新や増額通知のタイミングでの賃料交渉です。契約期間中でも交渉自体は可能ですが、貸主に契約内容を変更する義務はないため、更新時期を目安に進める方が信頼関係を保ちやすくなります。周辺相場や自社物件の条件を裏付けとして準備したうえで交渉に臨むことが、成功率を高めるポイントです。
フリーレント・保証金減額・設備負担など交渉カードを活用する
坪単価そのものの引き下げが難しい場合でも、フリーレント期間の延長や保証金の減額、原状回復・設備負担の見直しといった条件面での交渉によって、実質的な負担を下げられる余地があります。表面上の賃料だけでなく、契約条件全体を交渉のテーブルに乗せることで、貸主・借主双方が納得しやすい着地点を探ることができます。
割高が明確な場合は移転も含めて費用対効果を試算する
交渉によっても是正が難しいほど割高が明確な場合は、移転も視野に入れた費用対効果の試算が有効です。移転には初期費用や内装工事費がかかる一方、坪単価の低い物件や条件の良い物件に移ることで、中長期的にはコスト削減につながる可能性があります。試算にあたっては、次のようなコストを漏れなく洗い出すことが重要です。
- 原状回復費:現オフィス退去時にかかる工事費用
- 新規内装費:移転先の内装・什器にかかる初期費用
- 仲介手数料や保証金:新規契約時の初期コスト
- 移転作業費:引っ越しやシステム移設の費用
現賃料を払い続けた場合の中長期的な総額と、移転にかかる総コストを比較したうえで、経営判断として検討することが求められます。
まとめ:オフィス賃料相場は正しく読み解いて自社の判断に活かす
オフィス賃料相場は、東京都心5区で坪22,000円を超える水準まで回復しており、区やビルグレードによって坪単価には大きな幅があります。相場データはあくまで市場全体を把握するための参考情報であり、募集賃料と成約賃料の違いや共益費・フリーレントの条件を踏まえたうえで、自社物件の条件と照らし合わせることが欠かせません。相場を正しく読み解き、交渉や移転といった具体的な選択肢につなげていくことが、賃料の適正化への近道です。
オフィス賃料相場に関するよくある質問(FAQ)
オフィスの賃料相場や適正価格の判断、契約交渉に関して、企業の総務・経営企画担当者様からよくいただくご質問と回答をまとめました。
Q1. 相場表に載っている坪単価には「共益費(管理費)」が含まれていますか?
相場データや物件情報によって扱いが異なります。「賃料・共益費別」で表記されているケースも多いため、比較する際は必ず共益費を含んだ「共益費込み坪単価(実質坪単価)」に揃える必要があります。例えば、坪単価20,000円(共益費別・坪4,000円)の物件と、坪単価23,000円(共益費込み)の物件では、一見前者が安く見えますが、実質負担は後者の方が抑えられます。
Q2. 貸主(ビルオーナー)から賃料の増額改定を通知されました。そのまま受け入れるべきですか?
市場全体の上昇傾向だけを理由に、提示された増額幅をそのまま受け入れる必要はありません。まずは自社が入居するビルの築年数・設備・立地条件が、相場の上昇要因と見合っているかを確認しましょう。周辺の類似物件の成約相場や自社の入居履歴などを根拠に、増額幅の圧縮やフリーレントの付与、あるいは据え置きを求めて協議・交渉を行うことが可能です。
Q3. フリーレント(賃料無料期間)を考慮した「実質坪単価」はどのように計算すればいいですか?
契約期間全体の総支払額を、契約月数(および坪数)で割って算出します。たとえば「坪単価24,000円・2年間(24ヶ月)契約・フリーレント2ヶ月」の場合、実際の支払いは22ヶ月分となるため、「24,000円 × 22ヶ月 ÷ 24ヶ月 = 実質坪単価22,000円」となります。表面上の坪単価だけで判断せず、フリーレントを含めた実質コストで比較検討することが重要です。
Q4. 自社のオフィス賃料が相場より高いと感じた場合、いつのタイミングで交渉するのがベストですか?
最も円滑に交渉を進めやすいのは「契約更新の2〜6ヶ月前(解約予告期間の前)」や「貸主から増額通知が届いた直後」です。契約期間の途中で突然減額を申し出ても貸主側に変更に応じる義務はありませんが、更新時期であれば退去リスクを考慮した協議に応じてもらいやすくなります。また、周辺物件の具体的な募集データなど客観的な根拠を準備しておくことが成功の鍵となります。
Q5. 賃料交渉が難航した場合、移転によってトータルコストを下げる判断基準は何ですか?
「移転にかかる初期費用(旧オフィスの原状回復費、新オフィスの内装費・保証金・引っ越し費用等)を、新オフィスの賃料減額分で何ヶ月(何年)で回収できるか」が判断基準となります。一般的に、賃料削減効果によって移転コストを2〜3年程度で回収できる見込みが立つ場合は、中長期的な経営戦略としてオフィス移転に踏み切るメリットが大きいと判断できます。
※1 三鬼商事「オフィスマーケットデータ」2026年7月時点。東京ビジネス地区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)内の基準階面積100坪以上の主要貸事務所ビルが調査対象
※2 2026年4月1日時点で東京オフィスチェックに掲載中の46,989件の物件から、都心5区の募集坪単価を面積帯別に集計して算出
※3 2026年4月1日時点で東京オフィスチェックに掲載中の46,989件の物件から該当エリアの物件賃料をもとに算出(かつ1985年以降に竣工のビルのみ)
※4 ザイマックス不動産総合研究所「1人あたりオフィス面積調査(2025年)」https://soken.xymax.co.jp/report/2506-office_space_per_person_2025.html
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