S造・RC造・SRC造・木造の違いを徹底解説!オフィステナントにとって最適な建築構造とは?

S造・RC造・SRC造・木造の違いを徹底解説!オフィステナントにとって最適な建築構造とは?

オフィス移転を考える時にオフィスビルの構造は見落としがちです。しかし、オフィスビルの構造は「災害時の安全性」や「従業員の快適性」「賃料」などに影響を及ぼすため、入居前にしっかり把握しておきましょう。
この記事では、オフィス移転を検討している経営者の方やオフィス移転の担当者の方が、オフィスビルの構造の基本を知り、各構造の特性を理解することを目的にしています。入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、契約前に必ずお読みください。

 

オフィスビルの構造がオフィステナントに与える影響

「地震や火災の建物への影響」や「騒音の大きさ」「働きやすいレイアウト」は、オフィスビルの構造によって左右されます。
そのため、オフィスビルの構造がどのようにオフィステナントに影響を与えるかを知っておく必要があります。

災害時の安全性

従業員の安全を守るためには、入居しているオフィスビルの構造を理解したうえで、防災対策を行いましょう。

災害時の安全性①:耐震性

地震大国の日本は、常に地震の脅威と隣り合わせのため、地震対策に万全を期さなくてはなりません。
オフィスの構造によって地震に対する建物の強度や揺れ方が違います。
入居するオフィスビルの耐震性を考慮して什器の転倒防止措置や避難経路の確保など防災対策を講じることが大切です。

災害時の安全性②:耐火性

オフィスビルの構造によって火災への強さが変わります。
オフィス火災が発生すると室内の温度は500℃程度に達し、フラッシュオーバーが起こると1,000℃以上にもなります。
入居しているオフィスビルがどの程度火災に強いのかを把握したうえで適切な防災対策を行いましょう。

従業員の快適性

従業員の快適性①:遮音性

遮音性能は従業員の労働生産性や健康面に大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
日本音響学会によると、騒音下では 短期的な記憶力が約5%低下し、集中力も落ちるとされています。

人が感じ取ることができない低周波音(周波数1Hz~100Hz)が過剰になると不眠や頭痛、血圧の上昇、食欲不信などを引き起こす可能性があります。
遮音性はコンクリートのような重い材料ほど遮音性が高まります。
騒音が想定される立地においては、遮音性能が高いオフィス構造の選択が重要です。

従業員の快適性②:断熱性

断熱性が低いビルでは、外部の温度の影響を受けやすいため、夏冬それぞれに冷暖房の使用量が増加し、エネルギー消費量が高くなります。
空調代が上昇すると長期的には大きな負担となります。

働きやすいレイアウトの実現

オフィスビルの構造によって柱や梁の間隔が変わるため、レイアウトの自由度はオフィスビルの構造によって大きく左右されます。
大幅なレイアウト変更が必要な場合は、事前にオフィスビルの構造を確認し、レイアウト変更の柔軟性を確かめておきましょう。

 

オフィスビルの構造を左右する構造材料について

オフィスビルの構造を理解するには、構造材料の特性を理解することが最初のステップです。
鋼材、コンクリート、木材が代表的な構造材料になります。
漠然とした知識を、よりしっかりとした知識にすることで、オフィスビル構造全体を把握できます。

構造材料①:鋼材

「鋼材」は、鉄を主成分とし、炭素が0.3~2%含まれている合金です。炭素の割合が低いことで鉄よりも硬くなり、強度や耐久性が増します。
鋼材には重量鉄骨と軽量鉄鋼があり、オフィスビルに使われる重量鉄骨は厚さが6㎜以上の鋼材で、アパートなどに使われる軽量鉄骨は厚さ6㎜未満の鋼材です。

鋼材の利点

・強度が高く変形しにくい
・破断しにくく、粘り強いため地震の揺れを吸収する
・単位面積当たりの強度が大きいので、部材断面を小さくできる
・品質が安定している
・施工後すぐに使用できる

鋼材の欠点

・錆びやすいため、防錆塗装やメッキが必要
・高温になると強度が落ちる
・熱伝導率が高いため、断熱性が劣る
・生産コストが高い
・重量があるため設置には強固な基礎が必要

構造材料②:コンクリート

コンクリートの原材料は、石灰系の粉末である「セメント」と「水」「砂(細骨材)」「砂利(粗骨材)」に各種混和剤を混ぜて作られます。
コンクリートは、耐久性が高く圧縮強度に優れている一方で、引っ張り強度が弱いという特徴を持っています。
そのため、コンクリート単体で使用するより、引っ張り強度に優れている鉄筋を中に入れ鉄筋コンクリートとして使用されます。
製造が比較的容易で、形も自由に成形できますが、約1カ月かけてゆっくりと固まるため、使用には時間がかかります。
コンクリートは耐久性を求められる公共建築や高層ビルに適していて、基礎工事や壁材、橋梁、道路、ダムなど、多岐にわたる用途で利用されています。

コンクリートの利点

  • 圧縮強度が高いため、建物の柱や基礎に適している
  • 雨風や紫外線に強く、時間が経っても劣化しにくい
  • 不燃材料であり、高温でも強度を維持できる
  • 高密度な構造のため、音を遮断できる
  • 製造が容易で自由な形状を成形できる

コンクリートの欠点

  • 引っ張り強度が弱いため、鉄筋や鉄骨で補強する必要がある
  • 密度が高く、重い
  • 製造過程での環境負荷が高い
  • 施工時の環境に左右されるため、品質管理が難しい
  • 十分な強度になるまでに養生時間かかる

構造材料③:木材

オフィスビルの構造材料としては少ないですが、環境負荷が低い構造材料として注目が高まっています。
最近のオフィスビルでは集成材やCTLなどの積層して張り合わせた木材が使用されています。

  • 無垢材
    1本の木から製材して作られた接着剤を使わない木材です。
    木材の質感がとても良い反面、品質が安定しないため、割れや反り、収縮が集成材よりも生じやすい特徴があります。
  • 集成材
    製材した薄い板材を繊維方向が平行になるように、積層して張り合わせた木材のことです。
    集成材は複数の木材を接着剤で積層して作られ、強度や耐久性が高く、変形しにくいため、大スパンの梁や高強度の柱が必要なオフィスビルに適しています。
  • CLT
    製材した薄い板材を繊維方向が直交するように、積層して張り合わせた木材のことです。「直交集成板」とも呼ばれます。
    高い耐震性と耐火性を持つCLTは、広い面積をカバーできるため、壁や床材としても効果的で、耐震性が求められる中層以上のオフィスビルにも対応可能です。

木材の利点

  • 環境負荷が低い
  • 熱伝導率が低いため、断熱性能が優れている
  • 通気性が高く、湿度の調整ができるため結露やカビの発生を抑える
  • 軽量なため、地震による揺れを受け流しやすい
  • 施工性がよく短工期が可能

木材の欠点

  • 他の構造材料と比べて燃えやすく火災に弱い
  • 他の構造材料と比べて経年変化がある
  • 他の構造建材と比べて強度が低い
  • 湿度や水分に弱い
  • 超高層オフィスビルには適さない

オフィスビルの建築構造

鉄骨造(S造)

鉄骨造(S造)は、鋼鉄製の骨組みを使用して建てられた建築構造です。
鋼鉄は軽くて強く、粘り強いという特徴を持つため、高層ビルや商業施設など「大きな空間が必要な建物」で採用されてきました。
粘り強い特性がゆえに、力が加わった際に柔軟に変形して力を吸収するため、地震で大きく揺れたり、高層ビルが強風で揺れたりする特性があります。

鉄骨造(S造)の利点

  • 広々とした大空間や、開放的な大きな窓を作れる
  • 軽量で強度が高いため、高層建築に適している
  • 鉄骨は工場で生産しているため、建物の品質が安定している
  • RC造やSRC造に比べて坪単価当たりの建築費が安い
  • RC造やSRC造に比べて工期が短い

鉄骨造(S造)の欠点

  • S造は錆びやすいため、定期的なメンテナンス費用がかかる
  • 耐火性が低いため、仕上げ材で耐火性を高める必要がある
  • 振動が伝わりやすく、遮音性が低いため周囲の音が聞こえやすい
  • 断熱性が低いため空調効率が悪い
  • 大きな地震ではビルが大きく揺れる

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋コンクリート造(RC造)は、コンクリートと鉄筋を組み合わせた建築構造です。
RCとは「補強されたコンクリート」という意味で、コンクリートの弱点である引っ張り強度を鋼材(鉄筋)で補い、鋼材(鉄筋)の弱点である錆びや熱からコンクリートが守るように、お互いの利点で弱点を補っている構造になっています

鉄筋コンクリート造(RC造)はコンクリートで構成されているため、耐久性が高く、防音性が高いため、大規模ビルや騒音が多い都市部のオフィスビルで採用されてきました。

鉄筋コンクリート造(RC造)の利点

  • 耐久性が高いため、 適切なメンテナンスを行えば建物が長持ちする
  • 遮音性が優れているため、外部の騒音を遮断できる
  • 遮熱性が優れているため、室内の温度を一定に保つことができる
  • 重量があり、台風などの強風に耐えられるため、沿岸部でも安心の強度
  • 腐食しにくいため、建物のメンテナンス頻度が低い

鉄筋コンクリート造(RC造)の欠点

  • 建物の重量が重いため、地盤が安定していることが必要
  • コンクリートの乾燥に時間がかかるため、建設期間が長い
  • 現場でコンクリートを打設する場合は、S造と比べて品質が安定しない
  • 鉄筋コンクリートは資材と労力がかかるため、建設コストが高い
  • 柱や壁を移動することが難しいため改修の自由度が低い

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

鉄骨と鉄筋コンクリートの組み合わせによる建築構造です。
鉄筋コンクリート造の内部に鉄骨を内蔵しているため、耐火性と耐震性に優れた鉄筋コンクリート造と、柔らかく粘り強い鉄骨造のお互いの利点を生かした構造になっています。
この構造では、鉄骨が建物の主要な骨組みとして働き、鉄筋コンクリートが外部の力から守ります。SRC造は耐久性と安全性を最も重要視する大規模オフィスビルや高層ビルに多く採用されてきました。

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の利点

  • S造とRC造の双方の利点を兼ね備えている
  • 柔軟であり、剛性も高いため、地震に非常に強い
  • 柱を減らして、大きなスパンの広々とした空間が作れる
  • 火災に強いため、避難や消火活動の時間が確保できる
  • 重量があり剛性もあるため、台風などの強風に強い
  • 耐久性、耐震性、耐火性が非常に高いため、建物の資産価値が高い

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の欠点

  • 鉄骨とコンクリートを使用するため、建築コストが最も高い
  • 複雑な工程と、コンクリートの養生期間により、建設期間が長い
  • 非常に重量があるため、地盤改良や強固な基礎工事が必要
  • 高気密なので通気性が悪い
  • 解体作業に手間がかかり、コストがかさむ。

木造

木造は木材を建物の骨組みとした建築構造です。従来オフィスビルは、S造やRC造、SRC造で建築されていました。
近年は、集成材やCTLなどの木材技術の進歩や法改正の後押しがあり、木造オフィスビルは鉄骨造やRC造と変わらない強度・耐火性能の確保が可能になりました。そのため、木造は中規模ビルの採用が増えてきましたが、まだまだ一般的に採用されているとは言えません。
しかし、建設時のCO2排出削減が求められる中、木造の採用は今後も有力な選択肢になっていくと考えられています。

木造の利点

  • 再生可能な資源で炭素排出量が少ないため、環境負荷の低減ができる
  • 木材は熱伝導率が低いため、断熱性に優れている
  • 他の構造の建物より、軽量なため基礎工事が簡単で低コスト
  • 現場での組み立てが効率的に行えるため、施工期間が短縮される
  • 木材の温かみや自然な風合いにより、快適に過ごせる

木造の弱点

  • 耐火性は向上しているが、他の建築構造に比べて劣る
  • 他の構造に比べ、防耐火の条件が高い
  • 防水メンテナンスを定期的にする必要があり、手間と費用がかかる
  • RC造やSRC造と比較すると振動や遮音性に劣る
  • カビを防ぐための湿気管理やシロアリなどの防虫対策が必要

オフィステナントにとっての建築構造

これまで、オフィスビルの構造材料や建築構造について説明してきました。
この章では、4つの建築構造がオフィスに入居する企業にとって、どのような影響を与えるかを5つの観点で見ていきたいと思います。
新しいオフィスを探す前に頭に入れておくと、自社に合ったオフィスを選べる可能性が高まります。

ビルの構造によるテナントへの影響①:賃料

賃料は立地や築年数、設備など様々な要素によって決まりますが、建築コストも賃料に関係します。
一般的に、建築コストはSRC造が最も高額で、次いでRC造となっています。
S造は、工期が短く建設コストが比較的低いため、賃料が抑えられる傾向にあるでしょう。

ビルの構造によるテナントへの影響②:安全性

災害時の従業員の安全性を重視するなら、耐震性や耐火性に優れたコンクリート構造のSRC造やRC造が適しています。
火災が発生しても鉄筋コンクリートの構造は安定を保ちやすく、燃え広がりにくい特性があるため、火災に強い建物です。

ビルの構造によるテナントへの影響③:快適性

従業員の快適性を重視するなら、遮音性・断熱性が高いRC造やSRC造が適しています。
コンクリートは、外気や騒音の影響を受けにくいため、快適なオフィス環境で仕事に集中できます。
反面、コンクリートは湿気を通しにくく、結露が起きやすいため、換気が大切です。

ビルの構造によるテナントへの影響④:省エネ

空調の電気代を抑えるには、断熱性が高いRC造やSRC造が有利です。
コンクリートは、室温を保ちやすく、冷暖房の効率も良いため、空調費の削減に貢献します。

ビルの構造によるテナントへの影響⑤:レイアウト性

レイアウトの自由度を重視する場合は、S造が適しています。
S造は、柱や壁の配置が少なく、広い空間を実現しやすいのが特徴です。
そのためオープンスペースやレイアウト変更が比較的容易です。
鉄筋とコンクリートで構成されるRC造は、一般的に柱や壁が多くなり、間取りの制約が増える傾向にあります。

建築構造 賃料 災害時の安全性 従業員の快適性 空調の省エネ レイアウトの自由度
S造 ×
RC造 ×
SRC造 ×
木造
集成材・CLT

さいごに

それぞれの構造の特徴、利点、弱点を説明してきました。
皆さんは、どの構造が自社に合っていると感じましたか?

この記事の説明はあくまで一般的なものであり、実際の物件ごとに特徴は異なります。
しかし、それぞれの構造の特徴を知ることで、ご自身の希望に適した物件を見つけることができると思います。
ぜひオフィス選びの参考にしてください。

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