「ABWって結局なに?」と思ったら読んでください|企業が導入前に知るべきすべて

目次

  1. ABWの定義:業務に合わせて“働く場所”を選ぶ働き方
    1. ABWには「広義」と「狭義」の2つの捉え方がある
    2. ABWとフリーアドレスの違いとは?
  2. なぜ今、ABWが注目されているのか?導入メリット・デメリットを整理
    1. ABWが注目される背景:働き方の“多様化”と“柔軟性”がキーワード
      1. 現代の働き方の多様化
      2. ハイブリッドワークの普及
    2. ABWを導入するメリット
      1. 生産性の向上と効率化
      2. コスト削減
      3. ワークライフバランスの実現
      4. 優秀な人材の獲得・定着
    3. ABWを導入するデメリットと対策
      1. 勤怠管理が難しくなる
      2. コミュニケーションの断絶
      3. 導入コストと時間
  3. ABW導入の進め方と成功事例:新しい働き方を社内にどう定着させるか
    1. ステップ1:導入目的を明確にする
    2. ステップ2:現状の課題を“見える化”する
    3. ステップ3:ABWを前提にしたオフィスレイアウトを設計する
    4. ステップ4:ツール導入とセキュリティの整備
  4. ABW導入に成功した企業の事例
      1. 事例1:地方本社の企業が“ゾーニング”によって生産性と満足度を向上
      2. 事例2:全国に拠点を持つ大手企業が、ABWを通じてコミュニケーションを再構築
  5. 導入前に知っておきたい、ABWの“あるある失敗事例”
    1. 事例1:目的が曖昧なまま導入して、結局「フリーアドレス化」で終わった
    2. 事例2:現場の声を聞かずにレイアウト変更し、使われないスペースだらけに
    3. 失敗を防ぐためには?
  6. まとめ:ABWは“空間”ではなく“働き方”を変える仕組み
    1. ABW導入は、オフィス移転の絶好のタイミングでもある

働き方の多様化が加速する中、従業員の生産性や満足度を高めるために、新たなオフィス運営の手法が注目を集めています。そのひとつがABW(Activity Based Working)です。

「名前は聞いたことがあるけど、具体的にどういう働き方なのか分からない」
「フリーアドレスと何が違うの?」
そんな疑問を持つ経営者や人事・総務の方に向けて、本記事ではABWの基本からメリット・デメリット、導入方法、実例までをわかりやすく解説します。自社での導入を検討している方はもちろん、これからの働き方改革のヒントを探している方にもおすすめの内容です。

ABWの定義:業務に合わせて“働く場所”を選ぶ働き方

ABW(Activity Based Working)とは、従業員がその日の業務やタスクに応じて、最適な場所・環境を選んで働くスタイルのことです。従来のように「自分の席で1日中働く」のではなく、

  • 集中作業は静かな個室ブースで
  • チームでの打ち合わせはカジュアルな会議スペースで
  • 資料作成はカフェ風エリアで

といったように、業務ごとに最適な空間を選びながら柔軟に働くことができます。ABWは単なる座席の話ではありません。“どこで、どんなふうに働けば一番成果が出せるか”を軸に、オフィスのあり方自体を見直すアプローチです。

ABWには「広義」と「狭義」の2つの捉え方がある

ABWは企業によって解釈が異なり、大きく「広義」と「狭義」の2つに分類できます。

●広義のABW:
オフィスの中に限らず、リモートワーク、サテライトオフィス、コワーキングスペースなど、社外も含めて場所を自由に選べる働き方を指します。柔軟な勤務形態と組み合わせて導入する企業も増えています。

●狭義のABW:
主にオフィス内で働く環境に注目した考え方です。オフィスの中をゾーン分けして、「集中用」「打ち合わせ用」「雑談・休憩用」など、目的別のエリアを整備。社員がその日のタスクに応じて使い分けることを前提に設計されます。

企業の規模や業種、組織文化によって、どちらを重視するかは異なります。
導入前に「自社が目指すABW像」を明確にすることが成功の第一歩です。

ABWとフリーアドレスの違いとは?

ABWと混同されがちなのがフリーアドレス。どちらも「固定席を持たない」点は共通ですが、本質は異なります。

項目 フリーアドレス ABW(Activity Based Working)
定義 席を自由に選ぶ働き方 業務内容に応じて最適な場所を選ぶ働き方
主な特徴 日替わりで好きな席に座れる 目的ごとのゾーンを使い分ける
空間設計 均一なデスク配置が多い 集中・協働・休憩など多様なエリアを設計
導入目的 コスト削減・省スペース化 生産性や創造性の向上、満足度の改善

つまり、ABWは「ただ自由に座る」のではなく、「成果を出すために働き方を選ぶ」ことを重視しています。
そのため、より戦略的なオフィス設計やルール整備が求められるのです。

なぜ今、ABWが注目されているのか?導入メリット・デメリットを整理

働き方改革が進む中で、多くの企業が「働く環境そのものを見直そう」という動きを加速させています。その中心にあるのがABW(Activity Based Working)という概念です。この章では、ABWが注目される社会的背景と、導入によって得られるメリット・直面するデメリットについて整理します。

ABWが注目される背景:働き方の“多様化”と“柔軟性”がキーワード

現代の働き方の多様化

スマートフォンやクラウドツールの進化により、オフィスに縛られずどこでも働ける環境が整いつつあります。「自分のペースで働きたい」「生活に合わせた働き方をしたい」というニーズが高まる中、企業もそれに応えるべく柔軟な制度や空間設計を模索しています。

ABWは、まさにこのような変化にマッチした働き方です。

  • リモートワークやフレックスタイム制との相性が良く
  • 一人ひとりがその日の業務に合わせた場所で働ける

以上より、ワークライフバランスの実現や社員満足度の向上が期待されています。

ハイブリッドワークの普及

新型コロナウイルスの影響を受けて、一気に広がったハイブリッドワーク
これは、出社と在宅勤務を組み合わせた柔軟な働き方ですが、その浸透によってオフィスの役割が変わりつつあります。

  • 「みんなが同じ時間に、同じ場所で働く」という前提が崩れた
  • オフィスには“集まる意味”が求められるようになった

こうした背景の中、ABWは「オフィスに来る価値」を見直すための戦略として注目されています。仕事に応じた空間設計社員の自由な選択を組み合わせることで、現代的な働き方に対応する柔軟な土台が生まれるのです。

ABWを導入するメリット

生産性の向上と効率化

ABWの最大の強みは、“人が最も集中できる環境で働ける”ことにあります。静かな個室で資料作成に集中し、午後はオープンエリアで同僚とディスカッション──このように、業務に応じて環境を選べることで、生産性と創造性が高まります。

コスト削減

固定席を持たないABWでは、オフィススペースを最適化できるため、賃料・光熱費・設備費の圧縮が可能になります。リモートワークの併用によって、通勤費などの間接費削減も期待できます。さらに、オフィス面積の削減分を福利厚生やDX投資に充てることで、全社的な付加価値向上も図れます。

ワークライフバランスの実現

ABWは働き手に「時間」と「場所」の選択肢を与えるため、生活との両立がしやすいというメリットがあります。家族との時間や通院・子育てとの両立など、多様なライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になります。

優秀な人材の獲得・定着

柔軟な働き方を提供する企業は、求職者にとって非常に魅力的です。「選ばれる職場」になることで、採用競争力を強化し、離職防止にもつながります。特に若い世代や、専門性の高い人材に対しては、ABW導入が大きなアピール材料になるでしょう。

ABWを導入するデメリットと対策

勤怠管理が難しくなる

固定席がないABWでは、従業員の在席状況や労働時間の可視化が難しくなります。
解決策としては以下のようなものがあります:

  • クラウド型の勤怠管理ツールを導入する
  • セルフレポート+進捗共有の習慣をつくる
  • “管理”ではなく“信頼”を前提に仕組みをつくる

コミュニケーションの断絶

フロアを見渡せば誰がどこにいるかわかる──そんな環境ではないため、偶発的な会話や気軽な相談が減る傾向にあります。これに対しては:

  • チャット・ビデオ通話のルール整備
  • “つながる場”としての定例ミーティング
  • 雑談が生まれるレイアウト設計(カフェスペースなど)

など、コミュニケーション設計を意識することが大切です。

導入コストと時間

ABWの導入には、オフィスの再設計やITツールの整備、従業員教育など相応の初期投資と時間がかかります。リスクを抑えるには:

  • まずは小規模部門やパイロット導入から始める
  • 事前にコストシミュレーションとROI予測を立てる
  • 従業員からの声を反映しながら段階的に拡大する

ABWは一夜にして完成する仕組みではありません。だからこそ、戦略的に“育てていく”という発想が求められます。

ABW導入の進め方と成功事例:新しい働き方を社内にどう定着させるか

ABW(Activity Based Working)を導入するには、単にオフィスのレイアウトを変えるだけでは不十分です。目的の整理・現状の把握・空間設計・ツール選定など、段階的かつ計画的なアプローチが求められます。この章では、ABW導入に必要な4つの基本ステップと、実際に成功した企業の取り組みをご紹介します(社名は非公開)。

ステップ1:導入目的を明確にする

まず重要なのは、「なぜABWを導入するのか?」という目的の明確化です。曖昧な動機では、社内に納得感が生まれず、定着しません。たとえば、以下のような目的を設定すると効果的です。

  • 集中力を高めるための静かな作業環境が不足している
  • オフィスコストを削減したい
  • 社員のモチベーションやエンゲージメントを向上させたい

あわせて、経営層や従業員と目的を共有する場(説明会・ワークショップなど)を設け、全員で共通認識を持つことが成功の第一歩です。

ステップ2:現状の課題を“見える化”する

ABW導入の前に、現状の働き方や職場環境に関する不満や課題を洗い出す必要があります。アンケート・ヒアリング・業務データ分析を活用し、以下のような点を把握しましょう。

  • どの部署がどんな業務で困っているのか
  • 席の使用率や会議室の稼働率はどうか
  • 情報共有やコミュニケーションにどんな障害があるか

この段階で“ABWで解決できる課題”と“他の手段が適切な課題”を整理しておくことが、計画の精度を高めます。

ステップ3:ABWを前提にしたオフィスレイアウトを設計する

ABWの本質は、「空間を自由に使い分けること」。そのためには、目的に応じたゾーニングが欠かせません。

  • 集中ゾーン:電話や雑音の少ない個人ブースや防音スペース
  • 協働ゾーン:ホワイトボード付きのカジュアルミーティングエリア
  • リラックスゾーン:読書や軽作業ができるカフェ風の空間

レイアウトだけでなく、照明・色彩・音響・家具の配置まで含めた空間デザインが、ABWの効果を最大化します。

ステップ4:ツール導入とセキュリティの整備

ABWでは、時間や場所に縛られない働き方が前提となるため、ICTツールとセキュリティ対策が非常に重要です。

必須となる主なツール

  • チャット・ビデオ会議ツール(例:Slack、Teams、Zoom)
  • クラウドストレージ・ドキュメント共有(例:Google Workspace、Box)
  • プロジェクト管理ツール(例:Notion、Backlog、Asana)

セキュリティ対策も万全に

  • VPNや2段階認証によるアクセス制限
  • MDM(モバイルデバイス管理)による端末制御
  • 社員への情報セキュリティ教育の徹底

ABW導入に成功した企業の事例

ここでは、実際にABWを導入し、大きな成果をあげた企業の例を紹介します。

事例1:地方本社の企業が“ゾーニング”によって生産性と満足度を向上

ある企業では、集中作業・打ち合わせ・休憩など業務内容に応じたエリアを用意。社員の稼働状況や業務特性をヒアリングした上で、従来の“部門別固定席”を廃止しました。導入後1年で、

  • プロジェクト進行スピードの向上
  • 会議室の稼働率ダウン(代わりにオープンミーティング増加)
  • 社員満足度アンケートで「働きやすい」と回答した割合が72%→89%へ改善

という成果を記録。 リモート勤務との組み合わせにも柔軟に対応できる体制が整いました。

事例2:全国に拠点を持つ大手企業が、ABWを通じてコミュニケーションを再構築

拠点ごとに文化が異なり、社内コミュニケーションの課題を抱えていたある企業では、「プロジェクト単位で使えるコラボスペース」を新設。ICTツールの標準化とともに、定例ミーティング・雑談エリア・ワーケーション制度を導入。その結果、

  • 部門横断でのプロジェクトが3割増加
  • 新卒社員の定着率が向上
  • 人事部門の評価として「主体性を持って働く社員が増えた」との声

など、ABWの導入が企業文化そのものの活性化につながっています。

導入前に知っておきたい、ABWの“あるある失敗事例”

どんなに理想的な働き方でも、導入のプロセスを誤ると逆効果になることがあります。ここでは、ABW導入でよくある2つの失敗パターンをご紹介します。

事例1:目的が曖昧なまま導入して、結局「フリーアドレス化」で終わった

ある企業では、「流行だから」「他社もやっているから」という理由でABWを導入。しかし、導入目的が曖昧なままオフィスをリニューアルし、固定席をなくしただけで終わってしまいました。

結果として、

  • 社員が“自分の居場所”を感じられず、生産性が低下
  • 会議スペースが足りず、打ち合わせが廊下で行われる始末
  • ツールやルールの整備もなく、結局「席が空いてない」と不満続出

ABWの“見た目”だけを取り入れたことで、逆にオフィスのストレスが増してしまったのです。
目的と設計思想の不一致は、ABW導入において最も多い落とし穴のひとつです。

事例2:現場の声を聞かずにレイアウト変更し、使われないスペースだらけに

別の企業では、役員主導でABW導入を決定し、社員のニーズをヒアリングせずにレイアウトを変更しました。
おしゃれなラウンジエリアやカフェスペースは用意したものの、実際には以下のような課題が噴出。

  • 集中作業スペースがなく、エンジニアがカフェで仕方なく開発作業
  • リモート会議スペースが足りず、毎日取り合いに
  • ラウンジは“誰も使わない空間”に。設備だけが空しく残る

結果、導入から半年後に元の席固定制に戻ることに。現場の声を無視した導入は、どんなに立派なコンセプトでも失敗するという典型例です。

失敗を防ぐためには?

ABWの導入は「オフィスを変えること」ではなく、“働き方を進化させること”です。そのためには、

  • 導入の目的と効果を明確にする
  • 現場の声を反映する
  • 段階的に試行し、柔軟に修正する

といった慎重なプロセスが不可欠です。

まとめ:ABWは“空間”ではなく“働き方”を変える仕組み

ABWは、単なる「自由な席選び」ではありません。業務内容・状況・個人の特性に応じて、最適な働き方を選べる仕組みをつくることこそが、その本質です。
導入には明確な目的設定と社内理解が必要であり、レイアウトやツール、セキュリティまでを一体的に整備する必要があります。社内にABWを根づかせるには、「まず小さく試す」「社員の声を聞く」「調整しながら育てる」ことがポイント。
経営者や人事、総務担当者にとって、ABWはただのオフィストレンドではなく、自社の未来を形づくる選択肢の一つといえるでしょう。

ABW導入は、オフィス移転の絶好のタイミングでもある

ABWを本格的に導入しようと考えると、現状のオフィス環境では対応が難しい…という企業も少なくありません。今ある空間に無理やり合わせるより、新しい発想で「働き方に合ったオフィス」を選ぶという判断が、結果的に成功への近道となることもあります。
これを機に、ABWを見据えたオフィス移転を検討してみてはいかがでしょうか?
働く人がもっと自由に、快適に、成果を出せる場所をつくることは、企業の成長戦略にも直結します。

「ABWに適したレイアウトや導入事例が気になる」「移転すべきか悩んでいる」
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