業績好調でも「本社ビル」を手放す理由。アパレル大手ワールドが示す、これからのワークプレイス戦略

アパレル大手の株式会社ワールドが、神戸・ポートアイランドに位置する本社ビルを売却することを発表し、大きな注目を集めています。1984年の完成以来、「ファッション都市・神戸」の象徴として親しまれてきた地上27階建ての高層ビルが、なぜ今、売却の対象となったのでしょうか。
特にオフィス管理や経営企画に携わるバックオフィスの方々にとって、このニュースは単なる一企業の資産売却ではなく、「これからのオフィスと経営の在り方」を示す重要なケーススタディとなります。
1. 業績不振ではなく「攻め」の財務戦略
まず注目すべきは、ワールドの直近の業績です。売上高は前年同期比24.5%増、最終利益も16.3%増と非常に好調に推移しています。それにもかかわらず本社を売却するのは、決して後ろ向きな理由ではありません。
今回の売却には、約18億円の固定資産売却損が発生する見通しですが、ライトオンの完全子会社化に伴う一時的な利益計上などによって相殺されるため、経営への影響は軽微とされています。むしろ、この絶妙なタイミングで資産を整理し、「キャッシュフローの改善・強化」や「リスク分散」を図るという、極めて戦略的な財務判断がなされているのです。
2. 「象徴」から「効率」へ。ROIC経営へのシフト
近年、多くの日本企業が「資本効率重視(ROIC経営)」へと舵を切っています。ワールドも次期中期経営計画において、投下資本利益率(ROIC)を重視する方針を掲げています。
かつて巨大な自社ビルを保有することは企業のステータスであり、ブランディングの根幹でした。しかし、ザイマックス総研が指摘するように、現代はオフィス市場の状況や多様化する空間ニーズ、さらには新しいリース会計基準などを鑑みた「ワークプレイス戦略」が求められる時代です。ワールドの決断は、本社ビルを“象徴”として保有する時代からの脱却を象徴していると言えるでしょう。
3. ハイブリッドワーク時代の「最適なサイズ」
移転の背景には、働き方の大きな変化もあります。現在、リモートワークやハイブリッド勤務が定着する中で、地下1階・地上27階、延床面積約3.5万平方メートルという巨大なオフィス規模を維持する必要性が薄れています。
ワールドは、売却後も2年間は現在のビルを賃借して使用し、2028年をめどに神戸市内の新オフィスへ移転する計画です。新オフィスは、現在の規模感にこだわらず、多様化する働き方にフィットした「より働きやすい環境」を目指すものになると予想されます。
まとめ:バックオフィスが学ぶべき視点
ワールドの事例は、バックオフィス担当者にとって「不動産という固定資産をいかに流動化し、企業の持続的成長に結びつけるか」という視点を与えてくれます。
- 財務面: 売却損益のタイミングを他の利益と相殺する高度な財務管理。
- 運用面: 社会動向(ハイブリッドワーク)に合わせた、オフィスの「適正規模」の再定義。
- 地域連携: 拠点は変えても、創業の地である神戸への貢献姿勢は維持するブランディング。
「自社ビルを持つのが当たり前」という固定観念を捨て、企業の価値を最大化するために最適なワークプレイスとは何か。ワールドの決断は、その答えの一つを示しているのかもしれません。
担当マーケターの視点
マーケティングの視点から見ると、今回のワールドの決断は「ブランド資産の再定義」であると感じます。かつて、物理的な巨大建造物は「信頼」や「権威」というブランドイメージを顧客や投資家に植え付ける強力な「記号」でした。
しかし、デジタル化が進み、人々の関心が「所有」から「活用・体験」へと移った現代において、巨大な自社ビルは時として「変化への対応力を削ぐ重荷」と映るリスクを孕んでいます。ワールドは物理的な象徴を手放す代わりに、キャッシュフローとROICという「筋肉質な経営体質」をマーケットに提示しました。これは、実利を重視する現代の投資家に対する強力なポジショニング戦略です。
今後は「どこのビルにいるか」ではなく、「そのオフィスでどんなクリエイティビティが生まれているか」という中身の体験が、企業のブランド価値を決定づける時代になるでしょう。
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