LINEヤフー新オフィスに学ぶオフィス移転戦略|「出社したくなる職場」が企業成長を加速させる理由

リモートワークが定着した現在、多くの企業が「オフィスの存在意義」を改めて問い直しています。
オンライン会議やクラウドツールの普及によって、自宅でも十分に仕事ができる環境が整った一方で、組織文化の醸成や偶発的なコミュニケーションの創出など、リアルな場だからこそ生まれる価値も再評価されています。そうした中で注目を集めているのが、LINEヤフーが2025年4月に開設した東京・赤坂の新オフィスです。
約7,000席、16フロアという大規模な拠点でありながら、単なる執務スペースではなく、「社員が出社したくなる場所」を目指して設計された点が特徴です。今回は、LINEヤフーの新オフィスプロジェクトから、これからオフィス移転を検討するバックオフィス担当者が学ぶべきポイントを解説します。

「週3出社時代」に対応するための新オフィス
LINEヤフーの赤坂オフィス誕生の背景には、原則週3回出社への移行があります。コロナ禍において多くの企業と同様に、旧LINEと旧ヤフーもオフィススペースを縮小してきました。しかし出社回帰の流れを受け、改めて従業員が集まる場所の確保が必要になったのです。
新オフィスは16フロアで構成され、そのうち12フロアが執務スペースです。さらに社員食堂やコンビニ、多目的スペース、来客フロアなども整備されており、単なる「働く場所」ではなく、一つのコミュニティ空間として設計されています。
オフィス移転を検討する企業にとっても、今後は単純な席数確保だけではなく、「出社した時に何が得られるか」という視点が重要になっていることを示しています。
オフィスに求められるのは「自宅にはない選択肢」
LINEヤフーが新オフィス設計で重視したのは、自宅との競争ではありませんでした。同社は「自宅の快適性を超えることは難しい」と認識した上で、オフィスだからこそ提供できる価値に着目しています。例えば、
- チームでの共同作業
- 偶発的なコミュニケーション
- 気分に応じた働く場所の選択
- ランチや休憩時の交流
- 集中スペースの活用
などです。自宅では再現しにくい多様な働き方を実現することで、出社する意味を高めています。
これは多くの企業にも共通する課題です。特にバックオフィス部門はオンライン化が進んでいるため、「なぜ出社する必要があるのか」を従業員に示せなければ、オフィスの価値は低下してしまいます。
これからのオフィスは、業務を行う場所ではなく、組織の生産性やコミュニケーションを高めるプラットフォームとして考える必要があるでしょう。
「イケてるオフィス」が生む社員エンゲージメント
今回のプロジェクトで象徴的だったのが、出澤剛社長の「イケてるオフィスにしてほしい」という一言です。
具体的な指示はなく、デザインや設計は現場チームに委ねられました。この「イケてる」という言葉には、単なる見た目の美しさだけではなく、社員が誇りを持てる場所にしたいという意図が込められていると考えられます。実際にオフィス内には、
- 素材にこだわった内装
- 写真を撮りたくなる空間
- 居心地の良い共用エリア
- 交流を促進するラウンジ
などが配置されています。社員が「誰かに話したくなる」「人を連れてきたくなる」と感じる空間づくりが行われています。
近年、採用市場では給与や福利厚生だけでなく、働く環境そのものが企業選びの重要な要素になっています。オフィスは企業ブランドを体現する重要なタッチポイントと言えるでしょう。
7,000席を実現しながら快適性を確保
大規模オフィスでは、席数と快適性の両立が大きな課題になります。LINEヤフーでは当初約8,000人規模の受け入れを想定しながら、実際には約7,000席を配置しました。設計段階では席間隔を数センチ単位で調整しながらレイアウトを最適化したといいます。
一般的に快適なオフィスは1人当たり約10㎡が目安とされますが、赤坂オフィスは約7㎡です。数字だけ見ると余裕は大きくありません。
しかし、高い天井や広い動線、ラウンジスペースなど開放感のある共用部を配置することで、体感的な圧迫感を軽減しています。オフィス移転を進めるバックオフィス担当者にとっても、単純な面積だけでなく、従業員がどう感じるかという「体験設計」の視点が重要であることを示しています。
合併企業だからこそ生まれた新しいオフィス
LINEヤフーの赤坂オフィスは、合併後初めてゼロから設計された大型拠点です。興味深いのは、旧LINE出身者からは「LINEらしい」、旧ヤフー出身者からは「ヤフーらしい」という声が上がったことです。
つまり、どちらか一方の文化に寄せるのではなく、両社の価値観を融合した空間になったということです。企業統合や組織再編が増える中、オフィスは企業文化を統合する重要な役割も担っています。単なる不動産戦略ではなく、組織づくりの一環としてオフィスを捉える考え方は、多くの企業にとって参考になるでしょう。
オフィス移転で重要なのは「働く体験」の設計
従来のオフィス移転では、賃料・立地・面積・設備が主な検討項目でした。しかしハイブリッドワークが一般化した現在では、それだけでは十分ではありません。LINEヤフーの事例から見えてくるのは、「社員がどのような体験を得られるか」が重要になっているということです。
例として、
- 出社することで新しいアイデアが生まれる
- 仲間とのつながりを感じられる
- 企業文化を体感できる
こうした価値があるからこそ、従業員はオフィスに足を運びます。オフィス移転は単なるコストやスペースの見直しではなく、企業の未来を形づくる投資として考えるべき時代に入っていると言えるでしょう。
まとめ
LINEヤフーの赤坂オフィスは、「出社したくなるオフィスとは何か」という問いに対する一つの答えを示しています。自宅では得られない体験価値を提供し、社員同士の交流や企業文化の醸成を促進する空間づくりが徹底されています。オフィス移転を検討するバックオフィス担当者にとって重要なのは、単なる賃料や立地だけではなく、「働く体験」をどのように設計するかという視点です。
これからのオフィスは、業務を行う場所ではなく、人材採用や組織力強化、企業ブランディングを支える戦略的な経営資源としての役割を担っていくでしょう。
担当マーケターの視点
今回のLINEヤフーの事例で最も印象的だったのは、「オフィスを不動産ではなくブランド体験として捉えている点」です。マーケティングの世界では、顧客接点をいかに設計するかが重要視されていますが、近年は従業員もまた企業ブランドの重要な顧客となっています。採用競争が激化する中で、オフィスは福利厚生や給与と並ぶ差別化要素になりつつあります。
特に若手人材は企業理念や働く環境への共感を重視する傾向が強く、「どこで働くか」が企業選択の大きな判断基準になっています。その意味で、LINEヤフーが目指した「出社したくなる体験設計」は、人材採用やエンゲージメント向上に直結するマーケティング施策とも言えるでしょう。今後のオフィス移転では、賃料や坪数だけでなく、自社ブランドをどう体現する空間にするかという視点がますます重要になると感じます。
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