フリーレントで費用削減!知らないと 損するオフィス移転の知識

オフィスを移転する場合は、多額の費用がかかります。例えば、敷金や仲介手数料、内装工事費用、原状回復費用、引っ越し費用など様々です。
オフィス移転に携わる経営者や総務担当の方は、いくつもの手続きがあるため、細かな費用項目まで目が届かないのではないでしょうか?そのような方に向けて、フリーレントについて最低限知っておくべきことに絞って解説いたします。
この記事を読むことで、オフィス移転の初期費用が大幅に削減できる知識が身に付きますので、ぜひ最後までお読みください。
賃貸オフィスのフリーレントとは?
フリーレントとは、オフィス賃貸契約の開始後に一定期間の賃料が無料になる契約条件です。
フリーは「無料」レントは「家賃、賃借料」という意味になります。
元々は、借主に対して「オフィスの内装工事期間の賃料をサービスします。」という貸主の好意として始まった契約条件でした。
オフィスの内装工事は大規模な場合で1、2カ月程度かかるため、借主としては内装工事中の賃料を免除してくれるのは大変ありがたいです。
現在は、空室が長く続いている場合や立地が悪い物件に対して、空室期間を短くするための早期制約キャンペーンとして活用することが増えています。
フリーレントの期間
フリーレントの期間は1カ月から6カ月で設定されることが大半で、物件の立地や契約期間、貸主と借主の状況によって柔軟に設定されます。
2024年7月から9月の東京における全オフィス賃貸契約の平均フリーレント月数は2.6カ月、フリーレントが適用された契約のみに限定すると平均フリーレント期間は4.5カ月になりました。
(参考:ザイマックス不動産総合研究所・オフィスマーケットレポート)
平均フリーレント月数は2021年以降から上昇傾向にあります。
平均よりも短い2カ月以下のフリーレントの場合は、空室を埋めやすい人気エリアや新築物件の場合に設定される傾向です。
一方で、半年以上のフリーレントの期間は、大規模なテナントが長期契約を結ぶ場合に設定されることがありますが、稀なケースとなります。
フリーレントのメリット
貸主側のメリット
メリット①:空室を埋めやすくなる
空室が増えると賃料による収入が減少し、管理費や税金などの固定費の負担が増します。空室期間が長期間になると、キャッシュフローが悪化し費用の支払いに支障が出るため、空室を減らすことはオフィス経営にとって最も重要です。さらに、フリーレントを活用することで、比較検討している物件に対しての競争力が上がり、空室になっているオフィスの早期賃貸契約の可能性が高まります。例えば、空室が長期間続いている物件に対して、5年間の長期賃貸契約を条件に3カ月以上のフリーレントを提供するという契約条件を提示することもできます。
メリット②:物件の資産価値を維持できる
フリーレントを活用して賃料の値引きを回避することができます。例えば、賃料を下げて契約したい企業に対して、賃料は据え置きで3カ月のフリーレントを提供したとしましょう。借主は、契約期間の総賃料が減るため良いですが、貸主にとって「フリーレント」も「賃料の値下げ」も変わらないように思われるかもしれません。しかし賃料を値下げた場合は、収入が減る以外にも以下の大きなデメリットがあります。
- 他のテナントへの影響
特定の部屋だけの賃料を下げることは、その他のテナントからのクレームや賃料の引き下げ要望の引き金になる可能性があります。 - 物件の資産価値が低下する
物件の収益性を示す指標として「表面利回り」があります。
この数字は「(年間賃料収入÷物件価格)×100」で算出するため、賃料を下げると「表面利回り」が低下し、物件の資産価値が低下します。
資産価値の低下は、売却時の物件価格にも大きな影響が出るため、賃料の値引きは慎重に検討しましょう。
借主側のメリット
メリット①:初期費用の削減
今まで入居していたオフィスの原状復帰や引越し費用に加えて、新しいオフィスの内装工事などオフィスを移転する際は、色々な初期費用がかかります。特に新規事業やスタートアップ企業は初期段階では売上が少なく収益が安定しないことに加えて、新規事業のスタート時には多くの支出が発生するでしょう。その点、フリーレント物件は入居から数カ月は賃料の支払いが免除され、一時的に資金の余裕ができ、事業拡大や設備投資に回すことができます。
成長中の企業にとっては、賃料支払いを遅らせることで、重要な投資に資金を集中させることができるため、事業運営に必要なキャッシュフローの改善に繋がります。
メリット②:二重家賃の回避
二重家賃は、現オフィスと新オフィスの両方の賃料を同時に支払わなければならない状況を指します。オフィス移転時は、新オフィスには内装工事、現オフィスには原状復帰工事があるため、どうしても二重に賃料を支払わなくてはいけません。下の表を例にすると、新オフィスの契約開始の8月初旬から現オフィスの契約終了の10月下旬までの3ヵ月の間、二重家賃が発生します。
現オフィスから退去する際に、前もって退去する旨をビルオーナー側に告知する必要があり、これを「解約予告」といいます。
オフィスの解約予告期間は、物件によって様々ですが、通常3〜6カ月で設定されている場合が多いです。
現在のオフィスには「解約予告期間の短縮」、新たなオフィスには「フリーレントの設定」を交渉することで二重家賃の期間を減らすことができます。
現オフィスの解約予告期間を1カ月短縮し、新オフィスに2カ月のフリーレントの交渉ができれば、二重家賃の期間を0にできます。
〈解約予告と新オフィス契約のタイミングについて〉
万が一、良い物件が見つからなかった場合は、解約予告は原則取り消しができませんが、次の入居者が決まっていなければ解約予告の取り消しを受けてくれる可能性があります。
一方、先に新オフィスの賃貸借契約を行うと、解約予告を取り消さなければならない事態は回避できますが、賃料の二重支払いが長期化する可能性もあるので、慎重に検討しましょう。
フリーレントの注意点
フリーレント契約を結ぶ際は、契約条件を細部まで確認することが極めて重要です。
注意点①:共益費や光熱費は支払いが必要
通常のフリーレントは期間中でも共益費と光熱費を支払うことが一般的です。オフィス賃料の5~10%程度と言われてる共益費には、入居者が共同で使うエントランスホールやトイレ、エレベーターなどの定期清掃や点検に加えてセキュリティシステムや警備員の費用も含まれます。光熱費は「実費精算方式」と「固定料金方式」があります。
- 実費精算方式
実際に使用した光熱費(電気、水道、ガスなど)の金額に基づいて支払う。 - 固定料金方式
月々の光熱費を一定額で支払う方式で、使用量にかかわらず、定められた金額を支払う。
・完全フリーレントと通常フリーレントの違い
通常のフリーレントは賃料のみが免除され、共益費や管理費の支払いが発生します。一方、通常のフリーレントとは異なり、賃料だけではなく、共益費も含めてすべての費用が免除される「完全フリーレント」という制度があります。完全フリーレントの一部は高熱費も免除される場合もありますが、契約期間が長くなったり、フリーレント後の賃料が高くなる可能性もあるため、慎重に検討しましょう。契約時は、フリーレントの種類を確認し、長期的な総コストを計算して判断することが重要です。
注意点②:契約期間内の解約
フリーレントのある賃貸契約には最低契約期間が設定されており、借主はその期間内に解約すると違約金を支払うことが一般的です。例えば、フリーレント期間3カ月で設定した場合は「入居から1年以内に退去するには、賃料の3カ月分を違約金として支払う」などの契約があります。
貸主は借主から事前に違約金と同額の敷金を預かり、契約期間内に契約解除された場合は、敷金から短期解約違約金として金額を差し引き借主に返します。契約期間中の解約条件や、解約時の違約金の算定方法についても、事前に確認しておくことが重要です。
注意点③:賃料の上乗せ
貸主はフリーレント期間中に免除した賃料を、フリーレント期間の終了後の賃料から回収するために、賃料を上乗せする場合があります。そのため、フリーレント物件は他の物件と比べて賃料を高く設定している場合があります。契約期間全体を通して総コストが増えないように以下の作業を行ってださい。
均し賃料を算出する
均し賃料とは、「フリーレント期間も賃料を支払う」と考え、賃料の総額を契約期間全体で均した平均賃料のことです。
他に検討している物件と賃料を正確に比較する場合には、必ず必要になります。計算式は以下の通りです。
均し賃料 | 賃料/月 × (契約期間-フリーレント期間)÷ 契約期間 |
---|
■計算例
算出条件 | |
---|---|
賃料 | 60万円 |
契約期間 | 36カ月 |
フリーレント期間 | 3カ月 |
賃料60万円 ×(36カ月-3カ月)÷ 36カ月 = 55万円
共益費がある場合は、均し賃料に共益費を含める必要があります。
近隣の相場賃料と比べる
フリーレント期間後の賃料や均し賃料を近隣の相場賃料と比べて割高か見極めます。
フリーレント期間終了後に賃料が上がる条件がどのように定められているかを事前に確認し、予期せぬ賃料増額を避けるようにします。
注意点④:フリーレント期間中の会計処理
フリーレント期間は賃料の支払いがないため、「支払通りに処理していく方法(フリーレント期間は仕訳なし)」とすることが多いです。一方、上場企業など会計監査を受ける会社であれば、適切な方法で会計処理を行う必要があるため、「契約期間の総支払賃料を各月に按分して計上する方法(フリーレント期間も仕訳を切る処理)」を行います。この二つの会計処理について、前章と同様の賃料60万円、フリーレント期間3カ月、契約期間36カ月の場合を例に説明します。なお、発生した共益費などは別途仕訳する必要があります。
- フリーレント期間は仕訳なしとする処理
非上場の中小企業では、この会計処理を採用することが一般的です。
実際の現預金の動きに合わせて、フリーレント期間は「仕訳なし」とする処理のため分かりやすく、手間のかからない処理となります。
フリーレント期間(3カ月) フリーレント期間終了後(33カ月) 仕訳なし 借方 金額 貸方 金額 地代家賃 60万円 現預金 60万円 - フリーレント期間も仕訳を切る処理
上場企業や大企業などの会計検査を受ける企業は、この会計方法を行う必要があります。
賃料の総額をフリーレント期間を含む賃貸借期間で按分し、フリーレント期間においても仕訳を切る方法です。
「均し賃料」で会計処理するには、以下の2点の条件を満たすことが必要です。
・中途解約不能
・賃料総額が確定
フリーレント期間(3カ月) フリーレント期間終了後(33カ月) 借方 金額 貸方 金額 借方 金額 貸方 金額 地代家賃 55万円 未払い金 55万円 地代家賃 55万円 現預金 60万円 未払い金 5万円
会計上の処理は、地域によって会計基準や法規制により異なります。専門家の意見を求めることが重要です。
まとめ
借主にとってフリーレントは、オフィス移転の初期費用を削減するためにとても有効な契約条件です。そのため、フリーレント期間に目が行きがちですが、フリーレント終了後の賃料を近隣の同条件の物件としっかり比べることが大切です。もし、割高だと感じた時は、貸主にフリーレント終了後の賃料について、事前に交渉してみてください。
その際は、以下の点をおさえておきましょう。
- 均し賃料が近隣の同条件に比べて割高だという根拠
- 長期契約を提案してフリーレント後の賃料引き上げ幅を抑えてもらう
- フリーレント期間を短縮して賃料の引き上げ幅を抑える
以上で、フリーレントについて最低限知っておくべきことの解説を終わりにします。
最後までお読みいただきありがとうございました。皆さんのオフィス移転が成功することを祈っております。
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