東京で木造・木質化オフィスビルが増加|メリット・事例・移転時の注意点を解説

近年、東京のオフィス市場で「木造・木質化オフィスビル」への注目が高まっています。脱炭素やESG経営への対応に加え、働く人のウェルビーイングや企業ブランディングを重視する企業が増えていることが背景です。
従来、木造建築といえば低層の住宅や中小規模の建物をイメージするケースが多いでしょう。しかし現在では、耐火・耐震技術の進化によって、鉄骨造などと木材を組み合わせた「木造ハイブリッド高層ビル」も登場しています。
今回は、東京で木造・木質化オフィスビルが注目される理由や代表的な事例、オフィス移転を検討する際の注意点について解説します。
東京で木造・木質化オフィスビルが注目される理由
脱炭素・ESG経営への取り組みを可視化できる
木造・木質化オフィスが注目される大きな理由の一つが、環境負荷の低減です。
木材は樹木が成長する過程でCO₂を吸収し、炭素を固定します。そのため、建築物に木材を活用することで、鉄骨造やRC造と比較して建設時のCO₂排出量を抑えることが期待できます。
企業にとっては、単に「環境に配慮しています」と発信するだけではなく、オフィスそのものを環境への取り組みを示す一つの要素として活用できます。
特に、脱炭素やサステナビリティに関する情報開示が求められる企業にとっては、オフィス移転をESG経営の強化につなげる選択肢となるでしょう。
ウェルビーイングや働きやすさにつながる
木材を取り入れたオフィスは、一般的な無機質なオフィスとは異なり、木の香りや温かみのあるデザインを取り入れやすい点も特徴です。
木質空間によって、働く人の心理的な負担を軽減し、リラックスしやすい環境づくりにつながることが期待されています。
また、オフィス環境への関心が高まるなか、従業員が快適に働ける場所を整備することは、採用や人材定着の面でも重要です。
「どこで働くか」を重視する人材に対して、木質化された開放的なオフィスは、企業の魅力を伝える材料の一つになるでしょう。
企業ブランディングや差別化にも活用できる
木造・木質化オフィスは、デザイン面でも企業の個性を表現しやすいというメリットがあります。
一般的なオフィスビルとは異なる外観や内装を採用することで、来訪する取引先や求職者に強い印象を与えられます。
特に、環境配慮や地域・社会とのつながりを企業ブランドの一部として打ち出したい場合、木材のストーリー性をオフィスに取り入れることは有効です。
東京で注目される木造・木質オフィスビルの事例
東京では、すでに木造・木質化の技術を取り入れたオフィスビルが登場しています。
第一生命京橋キノテラス
中央区京橋に位置する「第一生命京橋キノテラス」は、清水建設の木質建築技術「シミズハイウッド」を採用した木造ハイブリッド構造のオフィスビルです。
鉄骨造と木材を組み合わせることで、木造建築でありながら高い耐火性・耐震性を確保しています。
さらに、建物全体で約37.5%のCO₂削減を実現しており、環境配慮とオフィス機能を両立した事例として注目されています。
野村不動産溜池山王ビル
港区赤坂に位置する「野村不動産溜池山王ビル」では、木質耐火構造部材を活用した木格子ファサードが特徴です。
オフィス内部にも木質空間を取り入れ、最大天井高3,600mmの開放的な無柱空間を実現しています。
デザイン性だけでなく、働く人が快適に過ごせるオフィス環境を意識した点が特徴といえるでしょう。
今後はさらに大規模な木造オフィスも登場
今後も東京では、大規模な木造・木質化オフィスビルの供給が予定されています。
例えば、三井不動産グループが推進する「日本橋本町三井ビルディング &forest」などでは、地上18階建ての木造ハイブリッドの賃貸オフィスビルとして日本最高層となる予定の物件が建設中です。
2027年1月の竣工が予定されており、今後は木造・木質化オフィスが「特殊な選択肢」ではなく、オフィス移転時の比較対象の一つになっていく可能性があります。
木造・木質化オフィスへ移転する際の注意点
魅力の多い木造・木質化オフィスですが、移転先として検討する際には注意すべきポイントもあります。
一つ目は、コストです。
最新の耐火・耐震技術や木質構造部材、国産材などを活用するため、同程度の規模・立地にある一般的な鉄骨造オフィスと比較すると、賃料や共益費が高くなるケースがあります。
そのため、賃料だけで判断するのではなく、光熱費や従業員の働きやすさ、採用力、企業ブランディングなども含めた「移転効果」で比較することが重要です。
二つ目は、物件数がまだ限られていることです。
木造・木質化オフィスは供給が増えているものの、一般的なオフィスビルと比較すれば選択肢は限定的です。希望するエリア、面積、賃料、駅からの距離などの条件をすべて満たす物件を見つけるのは容易ではありません。
移転を検討する場合は、希望条件に優先順位を付け、早い段階から物件情報を収集することが大切です。
オフィス移転では「木質化」を一つの選択肢に
東京のオフィス市場では、単に「駅から近い」「賃料が安い」といった従来型の条件だけではなく、環境性能や従業員のウェルビーイング、企業ブランドなどを含めて移転先を評価する企業が増えています。
木造・木質化オフィスは、こうした複数のニーズを同時に満たせる可能性がある点が魅力です。
一方で、コストや物件数といった課題もあるため、自社の移転目的を明確にしたうえで検討する必要があります。
「従業員が快適に働ける環境をつくりたい」「ESGへの取り組みをオフィスから発信したい」「他社との差別化につながるオフィスにしたい」といった目的がある企業にとって、今後、木造・木質化オフィスは有力な選択肢となりそうです。
担当マーケターの視点から
木造・木質化オフィスの魅力は、単なる「環境に優しい建物」という機能的な価値にとどまらない点にあります。マーケティングの視点で見ると、「環境」「従業員」「採用」「企業ブランディング」という複数のテーマを一つのオフィスで表現できることが大きな強みです。
特に採用競争が激しい企業にとって、オフィスは単なる仕事場ではなく、求職者に企業文化を体験してもらう重要な接点になっています。「なぜこのオフィスを選んだのか」というストーリーまで含めて発信できれば、木質化そのものが企業ブランドのコンテンツになります。
一方、マーケティング施策と同様に、導入すること自体を目的にしてはいけません。賃料や内装コストに対して、採用力向上や従業員満足度、企業イメージ向上など、どのようなリターンを期待するのかを整理することが重要です。
今後、木造高層ビルの供給が増えれば、「環境配慮型オフィス」という希少性は徐々に薄れる可能性があります。そのため、立地やスペックだけではなく、自社の企業理念や働き方と木質空間をどう結び付けるかが、移転後の価値を左右するポイントになるでしょう。
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